うずまきナルトのアカデミーの卒業は後から決まったものだ。

だから第七班が彼を加え、四人となるのはおかしな話ではないだろう。
それに上忍であるはたけカカシが一人アカデミーに戻らせてしまえば他の班と足並みが揃っただろう。
だが、彼はそれをせずに、別にいいんじゃない、何か不具合があっても何とかなるでしょ、とそのままにした。

そんな訳で私の所属する第七班は他の班より人数が一人多いまま、任務をこなしてる。

けれど、忍というものに私は些か夢を抱きすぎていたらしく、任務はくだらないものばかりだった。
猫の捜索だとか掃除やら張り紙だとか。雑用という言葉が適切だと思う。
中々やる気を出せずに和気あいあいとする彼らを一歩引いたところでずっと見ていた。

そうしているとふとある日カカシが、先生が、私にもっとやる気をだしたらどうなの、と。
ますますそんな気がなくなるというものだ。

「せめて、もっと愛想よくしなさい。そんな一人でななめ見てても楽しくないでしょ」
笑いなさい、ね、と彼の声がみみずみたいにうねうねとうごめいていく。

「楽しくもないのに、笑えません」

よくある話だと笑ってくれていいのだが。
私が幼い頃に家族は死んでしまった。
親戚の家に行くという話もあったんだが結局はなくなった。
消極的に生きる理由が私にはある気がする。
さぁ、よくある話だと笑ってくれ!

「…どうしたら笑うの?」
「楽しいことがあればいずれは」
「くすぐったりしたら笑う?」
「セクハラで訴えて勝てたらいずれは」
それは困るなぁ、と彼がのんきな顔で言う。

――――――

姉がいなくなった時私は大声をあげて泣きじゃくった。
母が死んだ時私は声をあげずに少しだけ泣いた。
父が消えた時には、目をかっと開いて、涙の一つも見せずにいた。

「レナ、泣いてはだめよ。立ち止まっている時間はないんだから」
「レナ、泣いてはいけないよ。悲しみに押し潰されてしまうから」

泣いてはいけないと、彼らが私に言っていたからだ。
そしていつしか涙は私の中から消え去ってしまったように感じる。

「どうしたら、泣けるのかしら」

その問いかけは親しい、気を許した相手だからこそ出たものだと思う。
私のその小さな問いかけを彼はきちんと受け止めたようでううん、と頭を捻る。

第七班として活動を長くするにつれて私の気が緩むのを感じていた。
ここからは踏み込まないでと線を引くのが馬鹿らしく思えてきたのだ。
彼らは真摯に私と接してくれる。くだらない線をものともせずに。
自然と笑みがこぼれるのを、頬が緩むのを、幸福だと、温かい気持ちが溢れるのを、確かに感じていた。

「無理しなくていいんじゃないの。ね、お前は笑ってる方がいいよ、レナ」
それから、心臓が飛び跳ねるような、そんな想いが私の中に存在するのもまた確かなことだった。

私は一回り以上も年上の、はたけカカシに恋をしている。