「ハリー、」
「体調が悪いので、欠席させてクダサイ」
クラッブとゴイルに交代で運ばれるようになってから比較的平和かつ円滑になっていた朝であるが、今日ばかりはそうもいかなかった。ドラコの声から苛立ちが隠せなくなっているが、どうしようもない。
今日はある意味、俺にとってはスネイプ先生との初対面よりも大きなイベントなのだから。
ってか、スネイプ先生はまだいいの!
傾向と対策がわかりやすいし立てやすい人だったから!
だって、こう言っちゃなんだが、ただのツンデレだろう!小さい頃からツンデレに囲まれてきた俺を舐めんなよ!
でも今日は!今日だけは!
傾向と対策云々ではないの!
もうマジ無理俺。
「今日は待ちに待った飛行訓練があるんだ!仮病なんて使ってる場合かっ」
ぶっちゃけ、俺、高所恐怖症です。
何なの、飛行訓練って。ってか、魔法使いの移動手段が未だに箒ってどうなの。あんな安定性も何もあったもんじゃないようなもので地上何百mも離れたところを優雅に飛行しようだなんて何考えてるの?バカなのアホなの?安全性とか考えたことある?
どうしても空を飛ばないといけないというのなら、飛行機とか…ほら原作でハリーとロンが乗ってた空飛ぶ自動車とかさ…。あ、あれって違法なんだっけ?なんだっていいよ、あんな直径数十cmの棒に生命預けるよりは…。
あはははは、もう笑うしかないね状態の俺は、抵抗虚しく、クラッブにより食堂へ連行され中。ドラコの自慢話も全く耳に入ってこないよ。そんなに嬉々として“自分は箒に乗るの上手いです”自慢しちゃって、俺とドラコは相容れない関係なんだね。ふざけんなよマジで。魔法界ってみんなバカなの?高所恐怖症の人が今まで一人も居なかったの?高所恐怖症の人は飛行訓練免除とかっていう配慮はない訳?
何て考えてたら、ドラコがグリフィンドールの机でネビル?だかに絡みに行ってました。
ちょ、おま、それ確か原作でハリーが身を挺して飛ぶことになる理由のやつだよね。ふざけんなよ、それを今の俺にやれってか?死亡フラグだろうが。
「ドラコ、」
クラッブに下ろしてもらうと、ふらふらした足取りながらドラコの元へ。「ハリーもこの愚鈍に何か言ってやれ」等と言っているが気にせず、忘れ玉?だっけ?そんな感じのをドラコの手から奪い取る。
「いいな、それ。俺も忘れっぽいから欲しいよ。今度売ってるお店とか教えて」
ネビル?らしき人に返す。ロンも近くに居たので久し振りの気持ちも込めて笑っておく。
「ドラコ、早く朝食取りに行こう。俺、飛行訓練、怖いから今日は一日中一緒に居てくれな?」
ついでにドラコに釘も刺しておく。お願いだから、飛行訓練の時間までネビルに絡みに行くのやめてね。今、俺とドラコは仲良いけど、何かの間違いで俺が空を飛ばなくちゃいけなくなる展開だけは、マジ勘弁なんで。
(あぁ…、飛行訓練憂鬱…)
140426