ハリ男 | ナノ

俺はずっと考えていた。どうにかスネイプ先生と仲良くする方法はないものか、と。例えば今回、スネイプ先生のいびりとも言える質問を平和にくぐりぬけたとして、だ。それは恐らく毎回続く。今回上手くくぐりぬけたところで毎回続いたりなんかしたら、所詮付け焼刃な俺ではなす術もなくぺしゃんが関の山だ。…正直に言うとハリーが何を質問されていたのか何て覚えていない俺はその質問の答えだけを先に暗記するということができないから、平和にくぐりぬけるだなんてほぼ不可能に近いのだが、まぁその辺の細かいことは気にしない。
そもそもだ、スネイプ先生は確か最後まで絶対的なハリーの味方であったはずだ。それは叶わぬ恋を貫いた結果。…俺の母さんへの想いからのはず。で、俺は原作通りだと母さんと瞳はそっくりなはずだ!顔はスネイプ先生の憎き恋敵の父さん似であるのが、スネイプとハリーの交わらなかった愛情の一端であるようだが、大丈夫!俺はその辺の事情もわかってるから!
つまりは、母さんの面影だけを思い出していただき、俺の生存確率をぐぐーんとアップさせるためにも、スネイプ先生には俺の味方になっていただきたく!これにつきる!

そこで俺の考えた最高で完璧な作戦とは…

「ハリー・ポッター」
「はい」
「貴様、我輩を舐めているのか?」
「え、どうしてですか?」

おめめだけ見てよ大作戦!
説明しよう!「おめめだけ見てよ大作戦」とは。顔が入る紙袋を用意します。被ったときに丁度目がくる辺りの位置を切り取る。以上で準備は終わり、後はこの紙袋を被るだけのとっても簡単な作戦だ。これにより、袋を被った俺は、他者からは目以外は確認することができない=母さんの面影が残った瞳だけ残して父さんの面影が残った顔面全てを覆い隠すことができるという画期的な発想です。何これ、思いついた俺、マジ天才。
紙袋の下でドヤ顔を決めてる俺は、スネイプ先生の発言の意図が全くわかりません。ので素直に聞き返したのだが、スネイプ先生は俺の返答にこめかみをひくりと奮わせた。

「だって先生、俺の瞳、好きだって聞きましたけど?」
「一体どこ情報だ。そして誤解を招くような言い方はやめたまえ」
「じゃあ、嫌いなんですか?」

んぐ、と言い返せなくなったスネイプ先生はやっぱりこの目には弱いんだろう。この目を否定することはできないんだろう。そうなんだろう。ふふ、このまま俺の味方になっちまえよ。そして俺の生存率を高めてくださいお願いします。ついでにいびりもやめてくれると嬉しいです。

「とにかく!貴様、今すぐその紙袋を取るんだ」
「ハリー…、」

くいと服を引かれる感覚に隣を見れば、不安そうなドラコの顔。よくよく見れば、不安そうなハラハラとした顔をしているのは、ドラコだけじゃなかった。周りのスリザリン生はもちろん、グリフィンドール生まで俺とスネイプ先生の攻防を見守っていた。

「先生の仰る通りにしろ」

スネイプ先生のことをちらちらと伺いながら小声で耳打ちしてくるドラコ。そこにははっきりと不機嫌丸出しのスネイプ先生への恐れがあり、これ以上怒らせることにより寮の減点や罰則を懸念しての焦りも見えた。

だが俺は!
寮の減点やら罰則ならなんていう目先の不利益のためだけに、将来の大きな利益を失うだなんて愚かなことはしないのだ!
だって命が掛かってるんだから!

「俺は権力には屈しなっ…ごほごほっ!」

こぶしを握りその強い決意と共に叫んだ俺だったが、紙袋を被っているということをすっかり忘れていた。
袋が口を塞いだことにより激しく咳き込む俺。涙目の俺。そして俺は一つのことを決断した。

背中を撫でてくれるドラコの体温を感じながら俺はそっと紙袋を取った――…


(死ぬかと思った)


131123
※よい子はマネしないでください


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