女主用短編 | ナノ

久しぶりに彼の姿を見た。
見たこともないような笑みを浮かべ「先輩、先輩!」と一人の女の人について回ってた。
それを一目見てすぐにわかった。あ、梓くん、あの人のことが好きなんだって。

だって、私の知っている梓くんは誰に話しかけられても愛想よく笑顔で応えるけど、その笑顔は作り笑顔で瞳がいつもつまらなさそうで。彼はいつもどこかで孤独を抱えてるみたいだった。どこか空虚だった。どんな喧騒の中に居ても瞳は冷めていた。
そんな人が今では心からの笑顔で一人のことを見てる。その瞳に熱が篭ってなくたって、その笑顔を見ただけで梓くんの気持ちは一目瞭然だった。

私もね、梓くんのこと大好きだったんだよ。
きっと梓くんにはただのクラスメイトとしてしか記憶に残ってないだろうけど。特別親しかった訳でもないし。
ただ見つめることしかできない恋だったけど、私なりに本気の恋だった。

それが一年振りの再会であっさりと終わりを迎えてしまうなんて予想もしてなかったけど。

…ううん、少しはしてたかもしれない。
梓くんと両思いになれるかもしれないなんて一度だって思ったことない。付き合いたいなんて思ったことないよ。
だからそれは婉曲的な失恋を受け入れていたということで、じわじわと死んでいく恋心をそれでも大事に抱き続けた結果が今ということなんだろう。
あはは、バカみたい自分。

女の人にくっついて呼び続ける梓くん。けど、女の人は誰かに気が付いたようで視線を後ろへと向ける。梓くんの眉間が寄せられるのが見えた。

「   、」

後ろを向いたまま、彼女がなんと言ったのかわからない。けど、雰囲気でわかってしまった。
そっか、あの人は…。

口が弧を描く。
きっとひどい顔をしているのだろう自覚はあるけど、頬の筋肉が言うことを聞いてくれない。


――梓くん、

どうかお幸せに…――


心の中で梓くんにお別れの言葉を告げて私はその場に背を向けた。



腐って歪んだ恋心は、素直に呪いの言葉を吐き出すことさえさせてくれない




120807
意味わからない?…私もわかりません。
ちなみに、stskです。


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