女主用短編 | ナノ

ん?用?

悪いな、今、見ての通りおとりこみちゅうってやつなんだ。後にしてくれるか?

は?馴れ初めだぁ?…何々、ちび助ってば気になっちゃう系?しょーがねーなー、どうしてもって言うなら聞かせてやるよ。
あれはなー、賭けテニスした帰りのことだ。…あ、まだそんなことしてんのかって?大丈夫、もうしてねーから。
で、とにかく、だ。その帰り道に偶然にも財布を拾った訳。んで、どうっすかなー、やっぱこれって警察に届けるべき?それともこれってば俺の日頃の行いがいいから神様がプレゼントしてくれたのかも?
んーんー唸って、財布を眺めてたんだよ。黒くて結構分厚め、重さもそこそこあるからおっさんのっぽいよなー、おっさんの財布ならもしかして届けたら何かお礼に貰えたりするかも?とか思って、警察に届けに行こうって決めた瞬間だよ。いきなり怒声が聞こえてきたんだ、「おいコラ、何してんだ小僧!」って。
信じられるか?何してんだ小僧、だぜ?

はは、本当、女の言うことじゃねーよな。で、胸倉掴んでぐらぐら揺らされて。ネコババすんなって親から教わらなかったのか、とか落し物は警察へ届けろよこんちくしょーとか。…っ、今思い出しても笑えてくる。
叫びたいこと叫ぶだけ叫んだら、今度は顔真っ青にしてよ。「…もしかして、今届けに行くところだったとか…?」とか言い出す始末。…んと、わけわかんねー。

あ?この出会いでどうして付き合うようになったのかわからない?それはだなー、男と女ってのはいろいろあんだよ。理屈じゃ説明できないようないろいろ、がなー。まぁ、この辺はガキなちび助に言ったってわかんねーだろうけど。

惚れた理由なんてのもぶっちゃけよくわかんねーんだよなー。いつでも傍で支えてやりたいから?笑った顔をずっと見ていたいから?…んー、どれもなんか違う気がすんだよなー。だって、多分だけど俺は会った瞬間からこいつに惹かれてたんだと思う。ビビっと来たってか、引力みたいに否応なく惹きつけられたってか。…あ、これが世に言うフォーリンラブ?

まぁ、好きなとこなら幾らでも言えるけど。意味わかんないってか思い込むと猪突猛進なとこだろー、男にも負けないくらい気が強いところだろー。でも、その割に弱虫で繊細、実は誰よりも泣き虫なところに、可愛いものが大好きで乙女チック趣味な癖に自分には似合わないと思って隠してるところ。

…そう言うなよ。ここからがいいところなんだから。





「はぁ?いいところ?」

意味のわからないリョーマは眉を顰める。自身の兄であるリョーガがこんな風にどこかバカにするような口調で話すということはとっくに知っていた。けれど、こんな、ときどき人をバカにするような口調でバカみたいに甘い惚気話を聞かされる側の身にもなって欲しい。
一言で言うと、“うんざりする”。

「そそ。それから、こいつは誰よりも意地っ張りで素直になれない癖に、誰よりも可愛いんだ」

はぁ?とリョーマが不満たらたら、若干の苛立ちを含んだ声を出しそうになったときだった。それよりも早く、リョーガが続ける。

「例えば、直接好きな理由を聞けないからって寝たフリしちゃうところとか、な」

健やかな寝息を立てリョーガの肩に頭を預けていたリョーガの彼女。その彼女の前髪をさっとどけるとリョーガは流れるような動作でちゅっと音を立てキスを一つ、額へと落とした。

その瞬間、リョーガ越しではあったが、リョーマにも彼女の顔が火がついたように赤く染まったのが見えた。

「い、いいつから気が付いてたの、リョーガ!」
「はは、最初からー」

ニッカニッカとムカつくくらいの兄を見て、リョーマは密かにため息を吐いた。

付き合ってられるか、バカップルが。

リョーガに用があったことも忘れ、リョーマはその場を後にした。


俺がこいつにれた理由
(んー…、よくわかんねーけど…。強いて言うなら、運命?)





120408
Sweet Bitter様提出


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