私はいつの間にか貴方に侵食されていた様だ。

侵食

ベットの上で素肌で戯れあう、その一時。
乙女を謳う貴方は獣へと成り下がる。
長い髪が私の素肌に散らばる度、私は貴方に殺されるような錯覚を覚える。
否、殺されてもいいと思ってしまうのだ。
口にしたことはない。
この先も、未来永劫ないだろう。
獣に成り下がった貴方が覗かせるサディスティックな一面に鼻で笑われたくはないから。
「ねぇ、何考えてんのよ?」
アタシの事だけ見てなさいよ、と強引に口付けられる。
「ちゃんと見てるわよ、グレル。」
私には貴方だけよ、と。
今度は私から口付けを。
舌を絡めて。
深く、深く。
白いシーツの海へ、官能と言う波へ私達は溺れていく。
触れ合った素肌が熱を帯びる。
白い肌と紅い髪のコントラスト。
綺麗だ、と思う。
女性の様に振舞う彼は細く、しかし程よく付いた筋肉が彼を男だと証明する。
「アンタはアタシが初めて惚れた女よ。」
耳元で甘く囁かれれば背中が粟立つ様な感覚。
「私は貴方にいつ捨てられるのかしらね。」
ずっと離さないでいて、の裏返し。
素直になれない私の精一杯の皮肉。
「馬鹿ね。恋の駆け引きに勝ったのはアタシよ?死んでもアンタを手放すつもりはないわよ。」
アンタは黙ってアタシに惚れていればいいのよ、とグレルが不敵に笑う。
今まで愛を囁いた男達も皆お前を手放さない、と云っていた気がする。
全ては泡沫に消えていった。
でも、グレルの言葉は本当の気がして。
信じたい、と思ってしまう。
「愛してるわ、グレル。」
口約束は簡単だ。
「アタシだって愛してるわよ、名。」
白く細いその腕に抱かれて私は眠る。

「アンタが思っているよりずっとアタシはアンタに一途なのよ。」
グレルは眠る名を抱きしめ、そっと呟く。
黄緑色の瞳が静かに閉じられた。



アトガキという名のいいわけ

今回は趣向を変えてみまして、彼女視点より。
なんとも描写が難しいもので。
いつもより色気を出したつもり。




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