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「ナナバ。はい。」
促すと差し出される手のひらにピンクのドロップキャンディを置く。
「わぁ〜。ありがとう。どうしたの?」
「ナナバには先回りでお菓子をあげます」
「あぁ、ハロウィンね。ふふ。イタズラ出来なくて残念。」
ふわりと笑うナナバに、少しの罪悪感が胸にジワリと押し寄せた。不格好なピンクの包みをつるりと剥いて口に含むのをただただ見ている。

「…っ!なにこりぇっ!うわっ!」

ころ、とあめ玉がナナバのほっぺをぷくと膨らませたら、可愛いなと思う間もなく吐き出されて地面をころころ転がって砂だらけになってしまった。

「激甘、辛、酸っぱいあめ玉です!」
「だろうね…今だかつてなく、口がとんでもないことになってる最中だよ。」

まず…と口元に手を当てて静かになるナナバを見て、イタズラが成功した嬉しさよりも申し訳け無さのほうが大きい。ごめんの気持ちを手に込めて丸くちじこまった背中に置く。
「ナナバごめんねぇ〜…」
「も〜…私が知ってるハロウィンはイタズラかお菓子か選ぶ権利があるはずなんだけど?」
「すいません。ナナバにはハナからイタズラかますつもりだったのよ。」
「ひっどいね。そんなコだったっけ?」
「ナナバがいつもイタズラ?したあとニコニコ楽しそうにしてるじゃない?」
「ん?まあ。楽しいからね。というか顔にでてる?私。」
「うん。割と。みんな知ってるよ。そう、それでね、イタズラしてみたらナナバの気持ちが分かるかなぁ〜と思ったんだよね。」
「あはは。バカだねぇ。分かるわけないことも分からなかったの?」

大口を開けて笑うナナバの唇から白い小さな歯が覗く。小さな子共みたいで可愛い。本当に甘いお菓子をあげたくなるな。つられて私も小さく笑って吐き出されたあめ玉を足で蹴飛ばした。

「そうね。やっぱり楽しくないし、第一にめんどくさいわ。私には向いてないわね。ナナバは?」
「ん?私は、イタズラされるのも楽しかったよ。誰も私にイタズラなんてしないからさ。新鮮でした。」

ポケットを探るナナバが「お礼だよ」とあめ玉を剥いて口元に寄越す。イチゴの甘い匂いが鼻をくすぐって、白い指先にあるピンクのあめ玉に噛みついたのに空振りに終わる。にかっと笑う拍子に見えた歯がつるりとひかって、漂う甘い匂いとか意地悪にドキドキした。ゾワリとして、楽しい。
ナナバも同じ気持ちかしら?


私はどうやらイタズラすりよりもされる方がいいみたい。


いたずらも甘い


20131031
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