「在室」のプレートがかかるドアを静かにノックする。
返事がない…のは当たり前か。同期は声が出ない状態らしいから。
深呼吸してもう一度ノックする。
やはり反応はなかった。


「寝てるのかもな。」
心なし、声を抑えて話すもう一人の同期。大人2人してドアの前にたちんぼだ。

「…様子みて帰ろうか。」
「そうだな。せっかく来たし」



ドアを開けると、日が柔らかく差し込む明るい部屋の小さなベッドに同期の長い髪が見えた。やはり寝ているらしかった。まあるく膨らんだガーゼケットがゆっくり上下するのを見て少し安心した。
部屋に入ると床が静かに鳴って、次の足を踏み出すのに少し慎重になる。とん、と背の高い同期が背中に触れるくらいにぶつかった。
「どうした?」
「ご、めん。」

きょとんとしたエルドに謝ると、「びびるなよ」と小さい子にするみたいに頭をくしゃりとされる。ははっと小さく笑うと追い越して彼女の様子を伺いにいく。
「寝てる。…いい顔してるぞ」


ベッドサイドで笑うエルドの横にちょこんと立つと丸くなって眠る彼女の横顔がよく見えた。少し痩けてしまった頬だけど赤みがあることでほっとした。

「ぐっすり、だね。ちょっと痩せた気がする」
「過労と睡眠不足と栄養失調だったんだと。で雨の中で任務して帰る途中に落馬したらしい。」
「相、変わらずのおばか…」
「まあ、バカは死んでも治らんと言うし。」
「少し休めば良くなるよね?」
「大丈夫だ。ただの風邪だから。怪我も軽いし。くしは昔から心配症だな。」
「普段元気な子だから、びっくりしてるの。でも、顔見てちょっと安心した。」
「そうだな。実は…俺も同じこと思ってたから、くしとこれて良かったよ。」
「相変わらずエルドは格好つけだね。」


私が不安だとエルドがちゃんと取り除いてくれる。でも結局の所、エルドだって彼女に会うまでは少なからず不安だったのだと思う。私の不安を無くすことで自分の不安を少しずつ無くしていったのかもしれない。

エルドを肘でちょんと小突くと、大きな手で口を隠して困ったように笑う。

眠る彼女に「ゆっくり休んで、早く良くなってね。元気になったら美味しいもの食べに行こうね。」と声をかけて部屋を後にした。





暖かい人たち





くしさんご心配おかけしました!ありがとうございました。



130910





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