同じ物を食べて、同じベットで寝ているのに人種だとか性別でこうも違うのか。と、椅子に座る彼女の髪にくしを通しながら不思議に思う。


赤い花の油だと言う黄金色のとろりとした液体を少し手にとって髪になじませる。ふわりとパン屋みたいなにおいがする。
髪を適当に分けて左耳の上から髪際をなぞるみたいに編み込んでいく。

「今日は編み込み?」
「ああ。少しきつめにするから、痛かったら言ってくれ」
「ん。左だけ?」
「左右でひとまとめ」
「…顔が大きく見えるからやだな。」
「なら、前髪を切るんだな」

何気なく髪をいじり始めてその延長で髪を結って遊んだりしていた。前はきつくしすぎて痛がられたり、やたら時間を掛けて出来上がっても思うようにはならず、鏡を見て彼女は笑っていた。
納得いかずやり直そうとすると「もういいよ」何度も言われていたけれど、今では彼女からの注文なんかもあるくらいには上達してしまった。


髪で隠れていた白いうなじにぞわりとして鼻を近づける。身じろぎする彼女が可愛いくて思わず鼻を軽く擦ってにおいを嗅ぐ。

「出来たぞ」
「う〜…。ありがとう。」
「ふっ。首弱いな」
「そう思うならやめてよ。意地悪。」
「好きな奴には意地悪したくなるんだ」

首の後ろに軽く唇を落とす。鼻で耳の後ろをくすぐると肩をすくめて身を硬くするから面白くなって首筋にキスをして前髪で鎖骨をくすぐってやる。

「ひ…んっ。やだ…!」
「…すまん。やりすぎたな。」
「バカミケ!」
「ふっ。お前があまりにも可愛くてな。」
「っ!むかつく!」
「…いや、違うな。お前の反応が可愛くてな。くくっ。」
「もうしらない。そーやって余裕ぶるのって…」
「…って?」
「格好いいとでもおもってんの?」

耳まで赤くして荒々しく洗面所に走り去る彼女からはいつもの匂いに混じって甘い匂いがする。
胸にじわりと暖かいものが広がり心臓が跳ねた。
無性に抱きしめたくなったのでゆっくりと彼女を追いかける。

余裕をなくした俺にきみは何て言うのか。実に楽しみだ。



甘い匂いに誘われる



130826





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