「うぅ〜〜っ!!!」 スーパーシングルトレイン49戦目、挑戦者ナマエ敗北。 涙目になって唸りながら座席に座り、小さく縮めた身体を悔しそうに震わせる彼女の隣に、勝者であるサブウェイマスターノボリがゆったりと腰掛けて苦笑した。 「――本当に、お強くなられましたね、ナマエ様」 「ッ、慰めなんていりませんっ!」 「いえ、本当に――っと、このやりとり、久しぶりでございますね」 「〜〜〜っ、ノボリさんの意地悪…!」 ポンポンと頭を撫でるノボリを恨めしげに睨むと、彼は珍しくにっこりと笑い、頭を撫でていた手をするりと滑らせて掌でナマエの頬を包んだ。 「わたくしが守るべき女性に、簡単に負けたとあっては格好がつきませんので」 「ッ!!ぁ、の…!」 「――ナマエ様」 「お返事を、聞かせてくださいまし」 親指がそっと、促すようにナマエの唇をなぞる。 強く求めるような、懇願するような熱の篭った眼差しに射抜かれ、心臓が壊れそうになった。 悲しいわけではないのに、なぜだか拡がった涙の膜で視界がじわりと滲む。 俯いて、顔を隠したいのにノボリの手がそれを許してくれない。 タタンタタンと揺れる電車の、二人きりの車両の空気が、いつの間にか甘ったるいムードに飲み込まれていた。 「っ…き、聞かなくてももう、わかってるくせに……!」 「ナマエ様の口から、言って頂きたいのです」 「〜〜〜〜!!!」 甘い。 甘すぎる。 ナマエの顔を覗きこんだノボリが目を細めて微笑む、その顔を直視できない。 咄嗟に腰を逃がして距離を取ろうとしても、いつの間にか背中に回っていたノボリの腕によってそれさえ阻まれてしまった。 それがまた、ナマエの混乱に拍車をかける。 (ど、しよ……!でもっ、だ、だって…!勝って、言いたかった……!) (――そう だ!やっぱり、勝ってから……!!) 「――ノボリさん!」 「は、いッッ?!」 ノボリの声が、思わず裏返った。 真っ赤になって震えていた愛しい少女が突然、大胆にも彼の胸に飛び込んできたからだ。 「こっ――これじゃ、ダメ…ですか……?」 恥ずかしそうに、震える小さな声で言ったナマエが、ノボリの背に回した腕でぎゅっと彼にしがみつく。 ――その瞬間、全身を戦慄かせたノボリの中の、理性と呼ばれるものが勢いよく弾け飛んだ。 「ナマエ様ぁあ!!!わたくし、わたくしもう我慢の限界でございます!!」 「きゃああ?!ちょっ、え?!や、ノボリさっ、ノボリさん?!」 「はぁはぁ!涙目可愛いらしいですナマエ様!わたくしのナマエ様…ッ!!」 「ジュンサーさんこの人です」 ついに本性を現して座席の上にナマエを押し倒し覆い被さったノボリを、ガラリとドアを開けて7両目に入ってきたクダリが冷え切った眼差しで見下ろしながら指差す。 そんな彼が天の助けとばかりに、ナマエはノボリの肩を必死に押し返しながら助けを求めた。 「く、クダリさん大変です!ノボリさんが、急におかしくなって…!」 「うん。ごめんねナマエちゃんそれノボリの通常運転だから!」 「ええええ?!」
ついにバレてしまいました 「ですがナマエ様、どんなわたくしであっても絶対にお嫌いにはならないのですよね!」 「(言質取られてた……!)」 (11.12.23) ハッピー(?)エンド! お付き合いありがとうございました!
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