風の休息



爽やかな風の吹く草原、辺りには鮮やかな小花や葉がこの場を訪れた物を歓迎するかの様に辺りを埋め尽くしている。神の国に向かう途中にこの草原を通りかかった少年達はここで暫しの休息を取る事にした

草原の鮮やかな葉にも負けない緑色の髪の少年――クラウド、彼は休息が決まるなり草原の中にただ一本だけ存在する大きな木の下に腰かけると愛用の剣とどこからか布を取りだし研きだす、その顔は少し眉間に皺が寄り真剣そのもの……

そんなクラウドを見つけるなりにこにこと近づく人物が1人。オレンジ色の髪に茶色のマントをはおり、頭にはちょこんと小さなシルクハットを乗せた可愛らしい少年――ウエーバー

ウエーバーはクラウドの隣に腰かけるとにこにこといつもの表情で話しかける

「クラウドさん、せっかくの休息なのにまた剣の手入れですか?」

「ああ、いつ戦闘になっても良いように剣の手入れは大切だろう」

「……たまにはこうただ風にあたるというのも良いものですよ?」

せっかくの休息なんですから、クラウドにその笑顔を向けながらそう付け足すと木の幹に背中を預け目を閉じ草原に吹く優しい風に髪をなびかせる。暫く静かな時が過ぎ、ウエーバーが隣を見るとクラウドは未だ真剣な顔で剣を研いていた。余りに剣に夢中な彼に対しウエーバーは得意の魔法で彼の手から剣と布を浮かせるとそのまま自分の後ろに隠してしまう

「お前……どういうつもりだ」

「クラウドさんもたまにはちゃんと休んで下さい。ほら」

剣を奪われたクラウドは更に眉間に皺を寄せるが、クラウドもウエーバーの魔法の腕の強さを知っている、魔法で剣を取られた以上彼から剣を取り返すのは安易ではないであろう。それこそ休息どころではない

クラウドは半ば諦め気味に木の幹に背中を預ける、隣ではウエーバーが満足げにいつもの笑顔を此方に向けていた



風の休息

「……たまには悪くねぇかもな」
ぽつりと呟いたこの言葉は草原に吹く風に流される



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -