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「えーっと…」
跡部主催、ハロウィンパーティー。 ひとりきりで食べ物を突いていた不二の袖をツイツイと引っ張る白い布。不審。 不二はぱちぱちと目をしばたたかせて首を傾げた。
「あの、どちらさま?」
「オバケだC〜」
よく見たら白い布に空いた穴から大きな猫目が覗いていた。 それに特徴的なアルファベットの語尾ときたらもうひとりしかいない。 不二は警戒心を解いて微笑んだ。
「なんだ。ジロちゃんか」
「あったりぃ〜」
白い布、オバケに扮した慈郎がひょこひょこと嬉しそうに手を振った。 そんな様子が可愛らしくて、不二は思わず吹き出してしまう。
「なんで笑うC〜っ!」
抗議の声を上げる白い布がますますおかしい。 きっと布の下ではぷっくり頬を膨らせているのだろう。
「Trick or Treat!」
オバケが布を突き出す。 布の下で慈郎が両手を出している恰好だ。
「はい。Happy Halloween」
呪文を唱えたオバケに、不二は用意していたポッキーを一本差し出して手の上に載せてやる。 オバケは大好物のポッキーに瞳をキラキラとさせて、
「うっれC〜♪」
相変わらずの調子に笑って、不二も自分の口にポッキーを運んだ。 ポリポリとポッキーをかじる音がする。
ただし、それはひとり分。
「あれ、ジロちゃん食べないの?」
慈郎の布に覆われた手はポッキーを掴んだものの口元へはいっていなかった。
「食べないってゆーか…」
「あ、」
「食べられない、的な?」
そういうこと。と、不二は納得。 覗いているのは慈郎の猫目だけで、それ以外は全部布に覆われていたのだ。
「えーっと、食べたい、よね?」
大好物のポッキーだ。 オバケはコクコクと頷いてみせる。
「どうしよっか?」
「んー…」
不二が苦笑い気味に問う。 オバケこと慈郎はしばらく考え込んで唸り声を出していた。
不二は一瞬、布脱げば良いんじゃない?とも思ったが、それではあまりにつまらない。 折角のハロウィンなのだ。
「じゃあじゃあ!」
閃いた!そんな様子の慈郎に、 同じく考え込んでいた不二は我に返る。
「うん、なに?」
「不二が食べさせて!」
オバケは切り抜いた穴の奥でニコニコと笑っている。
「はいっ」
それからオバケは、自らの足元の布を捲り上げて、
「もちろんポッキーゲーム方式で」
「えー…」
「早く早く!Trick or Treat!」
はしゃぐ慈郎に呆れたフリをして、不二は布を潜る。
潜ってしまえばどうなってしまうかは分かっていたけれど、 不二はそれでも良いと思った。
「改めまして、Happy Halloween」
肩を竦めながら不二は素直にポッキーを口にくわえた。 その距離、わずか数センチ。パーティー会場にて。
END... |
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