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「どない、思う…?」
跡部主催、ハロウィンパーティー。 濃紺の髪に気が付いた不二が忍足に話し掛けると彼は怖ず怖ずと振り返って、まずそう問うた。
その長い指が指し示すのは自らの頭。 というよりも、そこに乗っかっているフサフサとしたもの。 どこからどう見ても、耳だ。
曰く、跡部に仮装の衣装を任せると言ったらこうなった。とのこと。
灰銀色の毛並みが美しいそれをピンッと指で弾いて、不満げな、不安げな忍足。
「似合ってると思うよ?」
「…ほんま?」
不二の言葉に少し安心したような忍足の腰で、同じようにフサフサとしたものが揺れ動いた。こちらは耳と揃いの、尻尾。
まるで喜びじゃれつく犬のようだ、と不二は思う。
「うん、すごくカワイイと思う。」
思うままの感想を述べる。 が、忍足は今度は眉をひそめてしまった。
「なん、ソレ」
「だってカワイイじゃないか」
「ふぅん」
不二はにこにこ笑顔で、爪先立ちになりながら忍足の獣耳に触れた。 とはいっても、忍足は少し屈んでやって。 グッと近付いてきた濃紺の瞳に、不二の胸はどきりと鳴る。
「ペット扱いはあかんで。」
「ダメ?」
「ダメやあらへん。けど…」
至近距離の瞳がスッと妖艶に細まって、不二の胸はますます高鳴る。
「自分の手には負えへんのとちゃうかな?」
香水なんかしてないのに、芳しい甘い香りが鼻を擽っているようだった。 もう、壊れてしまいそう。 クラクラ。
目を合わせていられなくて堪らず俯く。 それでも尚、気の強い不二の唇は震えながらも異議を唱えたがって引き際を知らない。
「僕、犬、スキだよ?」
絡まってしまいそうな舌を動かしてそう伝えた。 途切れ途切れ、不自然になる。
忍足はそれさえ愛おしいように笑い声を転がして、不二の顎骨に指を滑らせた。
「これ、わんこちゃうで…?」
そうしてなぞっていって、頂に辿り着いたところでクイと持ち上げる。 不二の目線はまた、強制的に濃紺にぶつかってしまった。
「オオカミも手懐けられるんか、見物やな」
忍足は、不二の瞳に映り込む灰銀の獣耳を愉快そうに眺めていた。 そうとは知らず、まるで夜の帳のような濃紺の瞳に今だ見つめらている不二は頬を染めるばかり。
言われてみれば、そう。
「なぁ…アカンかったら喰うてもええ…?」
確かに今が今。 不二が対峙している相手は、飢えた捕食者の色を浮かべていた。
「う、ん…」
「ほな、景ちゃんにテイクアウトで言うてくるわ」
オオカミが舌なめずりした―――…
END... |
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