古手川稔/ガイジェ/ほのぼの


「大丈夫ですか?ガイさーん」


聞きなれた声が聞こえてきて俺は目をあけた。
そこには予想通りの見慣れた姿。
思わずほころぶ顔を必死に我慢していたが、次に俺を襲ったのは見下げたジェイドの見下げた顔の可愛さ、…ではなくて、割れるような激痛だった。

「った…!」
「おっと、あなたは安静にしていてください。…ルーク、ガイが目覚めましたよー」

起き上がろうとした俺を左手ひとつ、差し出し止めルークを呼ぶ。
ジェイドの声が頭に響いて、がんがんと、頭が揺れて痛い。非常に痛い。
その痛みに悶えていると入り口からひょこっと、赤が覗いた。
その顔は、どうやら心配しているようだった。

「ガイ!!」

赤が、ルークが叫ぶとまた俺の頭に悶々とした痛みが走るので、止めるよう頼もうと手をあげる。
けれどもルークは、心配そうな顔で、叫び続ける。

「ガイ、大丈夫か!?悪かった、俺が、もっとちゃんとしてればガイが、こんなことにならなかったのに!ごめん!!」
「ルー…ク、」
「ほんとにごめん!俺なんでもするからさ、」

謝らなくていい。
何があったかはあまり覚えていないけれど、とりあえずお前が無事なら。

そう言いたくて口を開こうとするが、マシンガントークを続けるルークの声が異常なまでに響き言う暇がない。
襲いくる激痛に耐えながらタイミングを探す。
おいルーク、いい加減にしろ。

「ルーク」

その一声で声がとまり、静まり返る。

「ガイは大丈夫ですから、そっとしておいてあげてください」
「でも…!」
「それだけ耳元で叫ぶとすぐには、治りませんよ?」「そ、それは、…」
「ガイの面倒なら私が見ておきますよ。あなたも休みなさい」
「わ、わかった!…けど一時間おきに見に来るからな!」
「はい、分かりました」

騒がしいルークが嵐のように去り、部屋には俺とジェイドの二人っきりになった。
ジェイドは俺の方を見てすこし笑うと近くのソファーに座った。

「ジェイド、」
「はい?」
「俺、…どうなったんだ、?」
「覚えていませんか?」
「残念ながら」

分かりました、ジェイドは喋りだした。

ジェイドによれば、俺は階段でつまずいて転びそうになったルークを庇って頭を打ったそうだ。
そんなに高いところから落下したわけでもないので、命に別状はないらしいが。

「けれど、油断は禁物です。ゆっくり休んでください」
「ああ、」

異常にジェイドが俺に優しくて、少し怖い気もするがこれが病人の特権なのだろう。
ジェイドがどこからともなく持ち出した本のページを一枚めくる。
ページをめくるぱら、という不規則な音を受けながら俺は瞳を閉じた。








次に俺が目を覚ましたのはその日の夕方だった。
頭痛はまだ続いていたが、先程までの酷いものではなかった。

「…、ジェイド」

ふと隣のソファーに目をやれば、寝る前と何ら変わらないジェイドの姿。
ただ、彼は規則正しい寝息をたてて眠っている。

「ありがとな」

手には開かれたままの本があり、顔がほころぶ。
穏やかな寝顔に口付けたい欲求があらわれたが、それをぐっと飲み込んで、毛布をかけてやった。

「ありがとう、ジェイド」

彼の心配は、優しくてあったかい。






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