君塚/ガイジェ/あまあま


ガイはジェイドの姿を見ると、いつも心に思う。蜜色の髪、透き通る白の肌、真っ赤な宝石の瞳。体は馬鹿みたいに細いし、今にも倒れるんじゃないかってくらい朧気に見える。黙って本を読んでいれば美しい人間にしか見えないのだが、口を開けばおちょくったような言葉ばかりで。大体なんでこんな奴が好きなんだって思っても、頭に浮かぶのは嫌みったらしい笑顔だけ。
ぼうっと、このまま黙って本を読んでいてくれとガイは手先の音機関を弄くりながら願うのだが、人生思った通りに行くわけじゃない。パタリと本を閉じる音が部屋に響いて、後ろでジェイドの立つ気配がした。
「もう遅いですよ。今から料理するにしても夜食になってしまいますねぇ」
ガイが座る椅子の後ろから、首に手を回される。今日は甘えただと笑いながら顔だけ後ろに振り返れば、弧を描いた瞳と目があった。
「ずいぶんとご機嫌みたいじゃないか」
「えぇ。忙しくて読めなかった本を、やっと今日読み終わりましたので」
言い終わった後、ジェイドはガイの額にキスを落とした。子どもみたいな、くすぐったいくらいの小さなキスだ。
「俺が夕飯つくるよ」
「いいんですか?」
「旦那、機嫌いいみたいだし。このまま甘やかしてやろうかと」
さっきのキスのお返しにと、ガイは唇にキスを落としてやった。これも掠める程度だが、ジェイドは幸せそうに微笑む。ジェイドの首に回していた手を解かせ指を絡めれば、ジェイドゆっくりと目を瞑りガイもそのままキスをした。
「一緒に、料理しましょうか」
「…なんでだ?」
「新婚夫婦、みたいじゃないですか」
赤い瞳は愉快そうに歪められる。甘えたい盛りかなあとジェイドらしくない行動にガイは驚いたが、純粋にそれが嬉しくて、笑みがこぼれた。
「なんですか、その緩んだ顔。あまり一緒にいたいと思える顔じゃないですよ」
あわてて口許を覆ったガイを見て、ジェイドは思わず吹き出してしまう。息を整えて、ガイの目を見つめた。
「まあ、そんなとこも好きですけどね」
フイ、と後ろを向いたジェイドの耳が赤いことに気づいて、今度はガイが吹き出した。素直なのか素直じゃないんだかと思いつつも、ジェイドの耳に触れる。
「耳、赤いけど」
「気のせいですよ。さあ早く夕食を作ってしまいましょう」
早口でまくし立てるように言ったジェイドをガイはおもしろく感じた。そして同時に、こんな日常を愛おしいと思えることが、とても幸せだと思った。

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