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トランプ勝負はダウト乱発ブーム到来でなかなか決着がつかず、結局グダグダなまま解散の時間になった。
今日は日の出ているうちに終わりにしようとあらかじめ決めてあった。
ゲームが盛り上がりすぎたせいで予定時間は若干オーバーしたけど、みんなでパーティーの片付けをして、四時になる前には寒河江くんちを出た。
寒河江くんの親も夜は帰ってくるっていうし、早々にお開きにした。

「そんじゃお疲れっしたー」
「またなー」
「スーザン先輩、受験勉強頑張ってくださーい」
「うん!ありがとう!」

寒河江くんちの前で別れの挨拶を交わす。
唯一由井くんだけは親の車で迎えに来てもらったそうで、みんなより先に帰ってしまった。クリスマスの時期になると勘違いストーカーの数が増えるらしい。ううむ、相変わらず苦労してるんだな……。
チャラ後輩のたちはそれぞれ彼女もちだからこれからデート。
小磯くんは趣味仲間と集まる予定があって、一年生二人はこのあとどこかに遊びに行くんだとか。

そして俺は――。

「あークソ、あいつら長居しすぎ」
「いいじゃん。それだけ楽しかったってことだよ!」
「はぁ……。じゃ、オレらも出ますか」
「うん!」

駅に向かう子が大半ななかで、俺だけは家が逆方向のためバス停が違うから……というテイでみんなと分かれたけれど、実は違う。
なんと俺もこれからデートなのである!もちろん寒河江くんと!

長い童貞歴のなかで恋人とのクリスマスデートは正直めっちゃ憧れだった。
ただ、寒河江くんから「受験生がオレにプレゼントとか気を遣わないでください」と厳しめに却下されたので、せめてデートだけは……!と食い下がった結果だ。
まあ、昼間は書道部の集まりが入ったから、結局夕方からのデートになったわけだけど。
むしろデートとしてはイブの夜が本番って感じがするし結果オーライだよね!

いったん家に戻って寒河江くんの外出準備を待つ。
わざわざ靴を脱ぐのも二度手間に思えて、俺は玄関先で待機した。

「センパイ、待たせてすいません」
「えっ、はやっ。そんな急がなくて良かったのに」

自室から出てきた寒河江くんは、オフホワイトのボアブルゾンに黒のジョガーパンツ、前掛けしたボディバッグという格好だった。
どうやら彼はスポーティ寄りのストリート系の服が好きらしくて、それがまためちゃくちゃ似合ってて格好いい。
ファッションに興味を持つようになってから、色々と見方も変わったし服の種類に詳しくなった。
俺は爽やかカジュアル系で固まってきたし、師匠の寒河江くんとはだいぶコーディネートの方向性が変わったと思う。

玄関で細身のスニーカーを履いた寒河江くんは、「さっさと行きましょう」と急かしてきた。

「そうだね!……あ、やっぱちょっと待って」
「はい?」

戸口に向けて体を半分捻った寒河江くんを引き留める。
顔だけこっちに向いた彼めがけて唇に唇を軽く触れさせた。温かくて柔らかいこの感触は、もうすっかり慣れたものだ。
間近で寒河江くんと目が合うと、へへ、と照れ笑いが漏れた。

「め、メリークリスマス〜」
「イブでしょ」
「同じじゃん……」
「いや違いますから」

呆れたように言った寒河江くんは、小さく嘆息したあとにキスを返してきた。
何度かついばむみたいにしてキスしてから名残惜しくも離れる。
すると寒河江くんはちょっとうつむいて照れくさそうな笑みを浮かべた。

「メリークリスマスです、センパイ」
「イブね!」
「どっちでもいいですよ、もう」

くだらないことを言い合いながら、俺たちはもう一回キスをした。

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