ミツバチだけが知っている2


昨日から欲求が止まらない。こういうことはたびたび起こる。セックスしたくてたまらなくなるのだ。
独り身の間はその欲求も薄かったが、好色な恋人に体を開かれてからは抑えがきかなくなってしまう。またその望みを喜んで叶えてくれる相手だから手に負えない。

「寝室に行く?」
「いい。ここで――」

移動する時間すらもどかしいと色っぽく訴えるエリオットの上に、ジンイェンは改めて覆い被さった。
シャツを開き、白い胸元をさらす。昨夜たくさん愛された乳首は何もせずとも、熟した果実さながらに赤く色づいて硬くなっていた。
食べてほしいと誘っているようなそこにジンイェンの熱い舌がぬるりと這う。

「んっ……ん」

上着をかいくぐり背中にジンイェンの手が添えられる。そうして逃げられないようにされたうえで左の乳首がキュッと吸われ、エリオットの腰が敏感に跳ねた。
最小限の動きで下衣が足から抜け落ちる。エリオットのペニスは上向き、先端に透明な雫が溜まっていた。
そよぐ風が素肌を撫でるので、屋敷の外で、しかも昼日中にこんなことをしてると思えばエリオットは今更ながらに己のはしたなさを恥じた。けれどやめてほしいとは思わない。むしろ背徳感と常にない興奮で息が上がってしまう。

唇を合わせ、舌を絡ませればさらに息が上がった。
キスをしながらジンイェンの指が尻の窄まりを探ったので、エリオットはくぐもった声を上げた。
恋人にそこを触れられて感じるものはもはや快感以外の何物でもない。

「アンタのここ、まだ濡れてる」
「あ、あ……」
「すぐ入っちゃいそーだね」

昨夜さんざん繋がりあった箇所は柔らかく香油で潤っていた。少しも待てないというように。
エリオットは手を伸ばしてジンイェンの下腹部に指を這わせた。彼のそこも硬く膨れ上がっている。
帯を解き、その場所だけ露出させる。ペニスは立派に反り返っていて、期待にエリオットの瞳が熱く潤む。
滲む先走りをエリオットが指先で塗り広げると、陽光を受けてジンイェンの先端がいやらしく濡れ光った。

「ジン……もう、挿れて、早く……」
「おねだりなんかしちゃって、可愛い、ねっ」
「あっ!」

エリオットの腿がやや強引に開かれたと同時に、ペニスの先が窄まりに潜り込んだ。
ひくひくと淫らに誘う穴に雄が収まっていく。挿れはじめはきつくても、その圧迫感が心地いい。挿れる方も挿れられる方も。
しかし寝椅子は男二人が性交するのに向いてない。狭い寝台以上に狭い。どうにか上手く挿入しようとして、ジンイェンはエリオットの片足をさらに持ち上げた。

「んんっ……!あっ、ジン、んっ、きみのが、深くっ……」
「いま誰か来たらやばいよねぇ。そんな風にやらしー声出しちゃって」
「あっ、そんな、こと、んっ……言わないで、くれ……っ」

揶揄を含んだジンイェンの言葉に、エリオットの背筋がぞくりと冷えた。
今日は来客の予定はない。ないはずだが、本当にそうだろうか。そんなことを思い巡らせる。
ガサ、と庭の茂みが揺れた気がした。風か、あるいは――。

狭い寝椅子の上で揺さぶられながらエリオットが耳を澄ませたそのとき、どこからかミツバチのかすかな羽音が聞こえた。
すると、感じる場所を擦りあげてペニスが奥深くまで突き刺さった。甘い痺れが全身を駆け抜けてゆく。

「あっ……だめ、そこっ、あぁっ」
「ダメなの?抜こうか?」
「ぬ、抜かな……で……っ」

意地悪く笑う恋人の背に手を回し、エリオットは涙目で懇願した。愛しい人と深く繋がるこの快感を長く味わっていたい、その一心で。
いつしか何もかもがどうでもよくなって、夢中になって恋人の体を貪った。

もとよりジンイェンはエリオットのこんな姿を他の誰にも見せようとは思わない。屋敷周辺に何者もいないと知ったうえでの戯言だった。
きつく締め付けてくる中を堪能していたジンイェンは、エリオットの股間に手を伸ばして硬くなっている芯を扱きあげた。
そうされてエリオットに新たな官能が加わる。先端からトロリと露が幹を伝った。
やがて耳元で「イキそう」と艶めいた低音で囁かれたエリオットは、直後、内部に熱いものを注がれて歓喜で身震いした。

「あっ!あっ、ジン……!」

一滴残らず注がれている最中、その感覚に触発されたようにエリオットのペニスからも飛沫が散った。昨夜から幾度も出しているので粘度が少ない精液は勢い良く飛び、胸のほうまで汚した。
エリオットは達してしまったあとも夢心地でジンイェンの唇を食んだ。応えるように舌が滑り込んでくれば嬉々として迎え入れる。
しばらく繋がったまま、事後の口付けを堪能した。

「……もう今日は、何もやる気が起きない……」
「はは、俺もだよ。ずっとこうしてようか?」
「それもいいかもな……」

快楽に侵された思考のままエリオットは素直に頷いた。
鳥のさえずりや噴水の水音、葉擦れの音、小さなミツバチが飛来していて庭は騒がしい。こんなに賑やかならば恋人同士が睦み合う声が増えても構わないだろう。
たまには寄り添って自堕落に過ごす一日というのも悪くない。

穏やかな日差しが、庭の片隅で重なる二人の姿を暖かく包み込んだ。


end.

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