志賀君とランキング1


<仁科×志賀>一年の秋頃の話





「抱きたい抱かれたいランキング?」
「そう」

聞き慣れない単語をおうむ返しすると、佐津川先輩が頷いた。
俺が今いる場所は新聞部の部室。佐津川先輩というのは二年生で、先月引き継ぎをしたばかりの新聞部・新部長だ。

高等部に進学し、文化祭も無事終わった11月。俺は選挙管理委員会の一員として生徒会役員選挙の雑事をこなしていた。
どうして監査委員の俺が選挙管理委員をやってるのかと問われれば、俺にも正直よく分からない。ただそういう決まりだとしか聞かされていない。
建前としては「生徒会の中で公正な立場にある委員だから」というもっともらしい理由がある。ちなみに風紀委員会は、生徒会役員をリコールできる権限があるのでこれに当たらないようだ。
「お前ら部活やってないし委員会も三年間変わらなくて暇なんだからやれよ」って素直に言えばいいのに。
もちろん監査三人だけで回せるはずがないから、ちゃんと期間限定の人員を募って運営しているんだけど。

選挙の立候補者や演説内容なんかは校内新聞で頒布される。そういう資料をせっせと新聞部に提供するのも選挙管理委員会の仕事だ。
監査ってマジで年中雑用しかやってねーんだけど。
まあ、そういうわけで、新聞部に来てみたらちょっとお茶でも飲んでかない?と先輩に誘われて、そして聞いたのが『抱きたい抱かれたいランキング』なる単語だった。

「……なんですかそれ」
「知らねえの?志賀だったら当然知ってるかと思ったけど」
「んなわけないっすよ」

俺はそこまで学園内の話題に精通してるわけじゃない。『抱きたい抱かれたいランキング』なんて初耳もいいところだ。

「毎年この時期に俺らがやってんだけど、結果出たから特別にお前に見せてあげちゃう」
「はぁ……」

曰く『抱きたい抱かれたいランキング』ってのは生徒のなかで「この人になら抱かれてもいい!むしろ抱いて!」「うおぉこいつのことマジ掘りてえ!」という、年頃の男子らしい性欲と直結した人気投票だとのことだった。
すでに同性愛蔓延る中等部でも、そんなゲスい人気投票なんてなかったからびっくりだ。堂々としすぎていっそ清々しい。

「つうか、お前は参加しなかったの?この投票」
「いやいや、むしろいつやってたんすか?委員のことで手一杯で全然知りませんでしたよ」
「我らが新聞部のサイトで。web投票形式だし、知らないヤツは全然知らないかもな。志賀って思ったよりそういうの疎いのな」

佐津川先輩がけらけらと笑いながら、机の引き出しから一枚のコピー用紙を手渡してきた。

「それ、上位の五人しかないけど。あとな、これって役員選挙とリンクしてるから選挙結果楽しみにしてな」
「へぇ」

言われて興味津々で用紙に目を落とす。
知っている名前ばかりで、つまり、この学園の有名人や人気者ばかりが並んでいる。そのなかに身近なヤツの名前を見つけて、思わず唸った。


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