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若林たちと別れたあと千歳を連れてB組に行くと、龍哉が自分の席でニヤニヤしながら待っていた。

「千歳の声聞こえたから来ると思った」
「たっちゃんさすが分かってる〜」

嬉しそうに言う千歳に龍哉も目を細めた。
やっぱ三人揃うとあーこれだなって感じがする。

「俺今日買い弁なんだけどお前らは?」
「俺も買い弁……か、学食」
「学食ダメ!ゼッタイ!」

お願いそれだけは勘弁して、と千歳が必死で懇願してくるから俺は苦笑しながら肩を叩いた。
よっぽど奴らと会いたくないらしい。

「したら中庭にでも行く?」
「空いてるかなぁ」
「いいじゃん地ベタでも。俺、外で食いたい気分」

天気がいいから気持ちいいだろうなぁと思いながら購買に向かう途中で、急にもよおした。その場で足を止めて龍哉と千歳に声をかける。

「わり、先行ってて。便所寄ってから行く」
「いってら」
「おー」

くっちゃべりながら歩いていく二人を見送ってから手近な便所に入った。

昼時なのに他に誰もいないないなんて珍しい。しかし用を足してると、すぐに誰かが入ってきた。
ところがそいつは何故か便器は他にも空いてるのに俺の隣に立つ。

知り合いか?と思って顔を上げると、顔見知りじゃないけど名前だけは知っているヤツだった。


二年E組の鬼頭要一。この学園には珍しい不良だ。
ヤンキーのくせに誰ともつるまない一匹狼で、犬歯が鋭いワイルドな男前。

真っ赤な頭髪をリーゼントにして襟足を伸ばし、ご丁寧に学ランまで着てるところがなかなか正統派っぽくて俺は結構好きだ。喋ったことはないけどな。

つかこの学ランスタイル、風紀に怒られないんだろうか。怒られても不良だから言うこと聞かないってこと?


不良でもちゃんと学校来てんだなーと感慨深く思ってると、鬼頭の視線を感じた。

ちらりと鬼頭の方を横目で見ると、すっげーガン見だった――俺のチンコを。

え、なんなの。なんでそんな真剣に見てんの俺のムスコを!
照れるとか恥ずかしいとか以前に気味が悪い。

だから俺も鬼頭のナニをガン見し返した。
……何やってんだ俺ら。


ションベンが終わって居心地悪い思いしながらナニをしまうと、鬼頭も無言でふぅ、と息を吐いて振り払っていた。

わけわかんねーコイツ。

手を洗ってるときに、背後から声をかけられた。
渋い低音でちょっと巻き舌の特徴的な喋り方は、鬼頭の声に違いない。

「……てめぇ志賀、つったか」
「は?」

振り返ると鬼頭は俺の方をじっと見ていた。

「なに、なんか用?」
「てめぇ、三春に近づくんじゃねぇぞ」
「はぁ?」

誰がいつ三春に近づいたんだっつーの。

ていうか鬼頭の口から三春の名前が出てくること自体がわけわかんねー。
何もかもが意味不明な鬼頭の言葉にイラついた。

しかし鬼頭はそれ以外何も言わず便所を出て行った。


「……手ぇ洗えよな」




鬼頭には絶対に近寄りたくねえ。色んな意味で。




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