時空間忍術に導かれた先


「ふむふむ。ここはこう、か? いや、違うな。ここはこう、だなーー」

 俺は、表の俺ではなく裏の俺が使っている屋敷の研究室で一人、時空間忍術の研究に没頭していた。

 生前、父さんが「黄色い閃光」と呼ばれた理由であり、最も得意としていたしていた術ーー時空間忍術。

 初めは死んだ自分の父が使っていたという理由で時空間忍術に興味を持ったのだが、今ではそれを抜きにしたとしても興味が尽きない。

 今日も今日とて、寝る間も惜しんで一人この部屋にこもっていたのだが、何日も寝てないことが原因で集中力が切れてしまい組む印を間違えてしまった。

「あっ、」

『なっ、バカナルトーー』

 珍しく焦りの滲んだ九尾ーー九喇嘛の声に自体は思ったよりもマズイことになったようだと寝不足で働かない頭でぼんやりと考える。

 そして自身の勘もまたこの状況がかなり危ないことを告げているのを察した俺は、

「ごめん、九喇嘛」

 その言葉を最後にその場から姿を消したのだった。



 屋敷の研究室から何故か見知らぬ森の中に飛ばされた俺は、パチパチと瞬きをしながら此処は一体何処なのだろうと首をかしげる。

 えーと、恐らく、いや十中八九、結んだ印が間違ったせいで此処に落とされたんだろうが……木の葉の中じゃなさそうだな。木の葉の近くでも無さそうだし、一体俺は何処に飛ばされたんだ?
 
「なあ九喇嘛、ここが何処だか分かるか?」

『…………』

?? もしかして怒ってるのか?

「おーい、九喇嘛?」

 腹の中にいる九喇嘛に何度も呼びかけるが全く応答がない。いつもなら即、返事をくれるのだが……一体どうして? 怒って不貞寝でもしてるのか?

「はあ……とりあえず人を探すか」

 情報収集の為、やむなく辺りを捜索することにした俺は、しばらく森の中を彷徨っているとふと何キロも先から数人の人の気配を感じた。

 やーと、人の気配を見つけた。

 が、相手が戦闘中なのを察し、面倒ごとの予感にため息をつくと気配を完全に消し、様子を見るために近づいた。ここが何処なのかを聞くために。



 木の上から見下ろすと眼下には、複数の大人に囲まれた自分と同じ年頃の黒髪の少年。
 両者ともに殺気立った様子から未だ戦闘中だということがわかる。


ーーーー苦戦しているな。


 複数の敵を相手に防戦一方。なんとか粘っているがそれも時間の問題だな。

 見た感じどちらかというと話が通じそうな方である少年をみすみす殺すつもりなんてないし、そもそも大人などはなから信用出来ない。

 はあ、こればっかりは力をつけた今でも変えられそうにない。

 思考の渦に飲まれる前に頭の中で考えていたことを振り切ると、情報の鍵を握る少年だろう少年を助けるべく木の上からふわりと音もなく飛び降りた。
 


 一方その頃、敵に囲まれた少年は内心かなり焦っていた。


ーーーーちっ。このままじゃマズイな。


 このままでは殺される。
 もう逃げるしかない。
 だが、この数を相手に逃げ切れるのかどうか分からなかった。

「これで終わりだ!」

 敵が印を組み始めるのを見て、しまったと思った。

 敵の繰り出した水遁に咄嗟に火遁で対抗しようとするが、それよりも早く大きな火の壁が少年を守った。

「っ」

 自分を守った炎に驚く少年。

「加勢か!?」

 加勢が現れたと気を引き締める敵。
 しかし彼らの予想は少し外れ、両者の間に現れたのは少年と同じ年頃の子どもだった。

「なっ、逃げろっ!」

 自分とそう変わらない年の少年の登場に驚く少年。

 自分でさえ叶わないのに無理だと思ったのだ。

 だが、ナルトは自分に忠告をする少年をちらりと一瞥するとすぐに顔を前へと戻してしまう。

 全く逃げる様子を見せないナルトに焦りと苛立ちを隠せない少年だが、しかしそれもすぐに覆されてしまう。

 ナルトはいつの間にか手に持っていた刀を使い、一方的な殺戮を始めたのだ。

 鮮やかに舞うように敵を倒す姿にいつの間にか自分の置かれた状況を忘れ魅入る黒髪の少年。

 次々と命が刈り取られ、あっという間に地に立っているのはナルトと少年の二人だけになった。
 


 刀についた血を払い落とすと少年の方を振り返るナルト。

 そこで初めて互いに向き合う。

 少年は目の前の人物の美しさに息を呑んだ。

 腰まで流れる黄金に輝く金色の髪。
 海のように深く煌めく碧眼。
 中性的で整った顔立ち。
 幼くも鍛え抜かれた細身の身体。

 当のナルトはというと、自分の知っている人間に何処か似ている目の前の少年に内心首を掲げる。


ーーこの少年、誰かに似ている。


「……助かった。感謝する」

 ほうっと息を漏らし恍惚としながら少年はナルトに礼の言葉を述べた。

「いや……ところで聞きたいことがあるんだが……」

「? なんだ?」

「ここが何処だか教えて欲しい」

「?」

「実は、時空間忍術の研究中に誤って印を間違えてしまってな。ここに飛ばされてしまったんだが生憎ここが何処だが分からなくてな。出来ればここが何処だが教え欲しい」

「(時空間忍術?)ここは、中立区域だ」

「中立区域?」

「ああ、この近辺はどこの領地でもないからな」

 少年の言う意味がよく分からない。
 中立区域だなんてあったか? そんなの聞いたことないんだが。

ーーなあ九喇嘛。

ーー…………

 ダメか。九喇嘛なら何か分かるかと思ったんだが…………。

「大丈夫か?」

「あ、ああ」

「俺はマダラ。お前の名は?」

「(!)……ナルトだ」

 まさか。
 時空間忍術。
 見知らぬ土地。
 そして何処か知り合いに似ているマダラと言う名の少年。

ーー俄かに信じ難いが…こいつ、あの「うちはマダラ」か? となるとここは過去、になるのか? はあ……また、凄いところに飛ばされたな。


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