里抜けの真相


【清様】(※スレサスナル。太陽は月に恋い焦がれる、をリクエストとのことなのでCPはこちらで決めさせていただきました)

※CP小説(スレサスナル)







『サスケが里抜けした』

 そう五代目から聞かされたシカマルが急いでナルトの家に向かうと、寝起きのナルトが目を擦りながら出てくる。

 ふあ〜っと欠伸をするナルトにありのまま事情を説明するシカマル。
 てっきり、話を聞いたナルトが「ぜってーサスケを連れ戻す!」なんて言って大騒ぎするものだと思っていたのだが、話を聞き終えた瞬間ナルトの雰囲気が一変した。

「ーーーーへえ」

 ストンと表情が抜け落ち、深い碧眼が氷のように冷え切ったかと思えば、ナルトから冷気が漂い始めたのだ。背後に死神の幻影まで見えてくる始末。シカマルはあれ?と目をこすった。

「ふうん、そう。あいつがねえ」

「お、おいナルト?」

「どうしたのシカマル?」

 ニッコリと女神のように微笑むナルトだが、目が全く笑っていない。そのあまりの迫力にシカマルはタジタジになる。

「い、いや、どうしたのってお前こそどうしたんだよ。なんかいつもと違えぞ」

「そう?シカマルの気のせいじゃない?」

「えっ、いやそんなわけーー「は?」

「あ、いえ。何でもないです」

 有無を言わさない笑顔に、シカマルは長いものには巻かれろ精神で口を閉じた。

「それじゃあ、さっさとサスケを連れ戻そうか」

「あ、はい」

 ふふふ、と微笑むナルトが怖くてサッと目をそらすシカマルだが、ふとナルトが握ってるドアノブが目に入り、ヒッと情け無く声を上げる。

「どうしたのシカマル?」

「いっ、いえ何でもないです!はい!」

 シカマルは原型を留めず、ひしゃげているドアノブを見なかった事にした。



◇◆◇◆◇



 一度準備をするためナルトはシカマルを追い出し、ナルトだけになった瞬間。

「ーー紫苑様」

 ナルトの前に狐面をした忍びが跪く。

「ふふ。聞いた?サスケが里抜けだって。笑っちゃう」

 言葉に反してナルトの身体からピリピリと静電気が迸り、九尾のチャクラがゆらゆらと漏れ出す。

「……連れ戻しに行かれるのですか」

 紫蘭の押し殺した声に不満そうな響きを捉えたナルトは、はたと冷静になる。目の前の部下はいつもサスケと折り合いが悪く、そのため今回の件が我慢ならないのだろう。

「なにが不満なの?紫蘭」

「この度の蘇芳の行動は目に余りますっ!」

「まあねえー」

「でしたらッ!」

「それでもあいつのこと、放っておけないんだ。ごめんね」

 声を荒げる紫蘭を宥めるように優しく頭を撫でた。撫でられた紫蘭は動揺し、首から上を一瞬で赤く染めると、慌てて逃げるように消えていった。

 どうして今回サスケがこんな行動に出たのか。その意味をよく理解していたナルトは、自分が迎えに行かなければ本当に里など容易に抜けてしまうことを知っていた。

 毎回ある理由からとんでもない騒動を度々起こすサスケ。それでも憎みきれないのはーーーー。

「さてと、あの馬鹿を迎えに行きますか」

 だからといって怒ってない、なんて言ってない。サスケに一発、螺旋丸をぶちかましたい程度には怒っていた。



◇◆◇◆◇



 門の前にシカマルを始め、キバやネジたちが集まっていた。そこへ静かな笑みを浮かべたナルトが颯爽と現れる。

 いつも騒がしいナルトの異変にキバたちは戸惑いを浮かべる。その横でシカマルが必死にナルトから目をそらした。そんな挙動不審な幼馴染をチョウジが訝しげに見ていることに気付く余裕すらなく。

「みんな早いね」

「ナルトっ!サスケくんが!サスケくんが……っ!」

 そこへ涙を浮かべたサクラがナルトに駆け寄り、縋り付く。
 ナルトはチラリとサクラを一瞥すると桜色の髪にポンと優しく手を置いた。

「ーー大丈夫だよサクラ」

「え、」

 自分の頭の上にのるナルトの手、常にない穏やかな口調、そしていつもと違う名前の呼び方に驚いて、涙が止まる。

 ナルトと目が合うと、優しげな目が柔らかく細まり、その大人っぽい表情に、こんな時なのにドキッとサクラの胸が高鳴った。

 待て待て待て!こいつはあのナルトよ。何ドキッとしてるのよ。サスケくんの一大事なのよサクラ!と慌てて心を鎮める。

「サスケは俺が連れ戻すから安心して」

「ナルトっ!」

「ふふ……大丈夫。うっかり殺さないよう気をつけるから」

「え」

 よくよく見ると全く笑っていない目と目が合い、たらりと冷や汗が流れた。
 やばいやばいやばい!なんかよく分からないけどナルト、キレてる!

「クックックッ。こっちはここ一ヶ月ぶっ通しで片っ端から任務を終わらせて、今日は待ちに待った半年ぶりの休暇だっていうのに、どこかのお馬鹿さんのせいで潰れちゃった。ふふ……あの野郎ーーーー



















 ーーーーーーぶっ潰す」
 
「ヒッ!」

 1オクターブ低い声で呟かれた言葉を運悪く拾ってしまい、サクラが後ずさる。

 さっきとは打って変わって、どす黒いオーラを全身から放つナルトに他の者も頬を引きつらせた。

 ナルトが放った台詞の中にいくつかおかしな点があることに、ナルトの豹変にビビる彼らはついぞ気が付かず。

「さあサスケのところに逝こうか」

 あれ?行くじゃなくて逝くって聞こえるんですけど……。
 いや気のせいだ。気のせい。そうじゃなきゃやってられない!
 俺は何も見てない。俺は何も見てない。俺は何も見てない。
 なんでこんな状態のナルトと一緒なの?行きたくないんですけど。

「ーーふふ。なんか言った?」

『いえ!なんでもありません!』

 ビシッと敬礼するシカマルたち。
 こうしてナルトを先頭にサスケ奪還に向かった。

 そして行く手を阻む敵に遭遇する。
 一応隊長であるシカマルが作戦を立てるのだが。

「ーー邪魔」

 そのナルトの一言とともにあっさりと敵が倒される。ええええ、と四人の声なき声が辺りに響いた。

 今のなに。
 さ、さあ?
 え?ナルト強くない?
 いや、敵が弱いんだよ!うん!そうだよ!あはは!あは!

「ちゃっちゃっと済ませて逝くよ」

『は、はい!』

 数人いた敵をナルトが全て一撃で片付けてしまい、誰一人欠けることなく、サスケの元にたどり着く。

 ナルトたちに気付き、サスケがゆっくりと振り返った。
 その目が煌めいたように見えたが、瞬きをするとそれは鬱陶しそうな表情に変わる。

 何も疑問に思ってはいけないと最大級の警報が頭の中で鳴り響き、今のはきっと気のせいだとシカマルたちは自身に言い聞かせた。

 ナルトが一歩踏み出すと辺りに緊迫した空気が流れる。


ーー対面するナルトとサスケ


「サスケ、」

「ナルト……」


 静かに互いの名を呼ぶ二人を固唾を飲んで見守る。そんな中、最初に動いたのはサスケだった。ナルトに向かって飛び込んだかと思うとーーーー。














「ナルト!会いたかったああああ!」

 腕を大きく広げ、満面の笑みでナルトに抱きつこうとするサスケ。だが、それを見計らったナルトがサッと横に避けた。



ーーーーズシャアァアアア



 サスケは勢いを殺せず、忍びにあるまじき音を立て、盛大に転んだ。



ーーーーーしーん




 二人のやり取りを一部始終見てしまったシカマルたちは唖然としていた。

 あれ?今のなに?なんでサスケがナルトに抱きつこうとするの?
 え?てかサスケすっごい笑顔だったよね?ちょっと気持ち悪かった。
 てかナルト普通に避けたよね?え?なに?どうなってんの?
 あー俺は何も見てない。俺は何も見てない。俺は何も見てない。

「なんで避けんだよナルト」

「その前に何か言うことがあるよな?」

「?」

 首を傾げ、全く反省の色が見えないサスケを見て、ゆらりゆらりとナルトの身体から黒い炎が浮かび上がる。


ーーあ、やばっ


 サスケ以外の心が一つになる。本能的に危機を感じたシカマルたちはナルトから一斉に飛びのいた。

 そしてナルトの怒号が響き渡る。

「こんの大馬鹿野郎ーーッ!里抜けなんてふざけたこと、やらかしやがって!こちとら徹夜明けで疲れてんだッ!やるなら俺が疲れてない時にしやがれッ!」


ーーええええええ!そういう問題!?


「だって……仕方ないだろ!」

 悲壮な顔で俯くサスケにシカマルたちは息を呑む。やっぱり一族の復讐の為か?と真剣な顔になる。











「お前が俺を放ったらかしにするから!」


ーーは?


「いつもいつも任務任務任務!俺と任務、どっちが大事なんだぁあああ!」


ーーはああああ?


「だから任務なんだからしょうがないだろう。その代わり、空いた時間はいつもサスケにあててるだろ?」


ーーえ?それって、


「そんなんじゃ全然足りない!俺はお前の恋人なのに!もっと構え!俺は寂しいと死んじゃうんだぞ!いいのか!?」


ーーうわあ。この二人って付き合ってたんだ。


「はあ……わかったわかった。ほら」

 仕方なさそうに微笑み、ナルトは腕を広げるとサスケの顔がパアッと輝く。
 ナルトは嬉しそうに懐に飛び込んでくるサスケを笑顔でーーーー叩き潰した。



ーードッゴーーーンッ!


 ナルトが立ってるところを中心に地面が割れ、シカマルたちはヒイッと悲鳴をあげた。

 一方地面に叩きつけられたサスケはうつ伏せに気絶していたが、その顔はどことなく幸せそうだった。

「ーーよし帰ろうか」

 サスケの足首を掴むとシカマルたちを振り返った。その顔は実に晴れ晴れとしていたそうだ。

 こうしてサスケの里抜け騒動は呆気なく幕を閉じる。なぜサスケが里抜けなんてやらかしたのか。まさかそれが「最近恋人に構ってもらえないから構って欲しくてしたこと」だとは、その場に居合わせたシカマルたちしか知らない。

 その後、目を覚ましたサスケは、なんだかんだでナルトに構って貰い、しばらくの間、始終ご機嫌だった。それはカカシが不気味がり、サクラが失神するほどーー。

 こうして周囲を引っ掻き回したサスケと恋人のナルト。まさかこれから先、幾度もその騒動に自分たちが巻き込まれることなど思いもよらないシカマルたちだった。



◇◆◇◆◇



あとがき
清様。リクエストありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ないです。『太陽は月に恋い焦がれる』をリクエストとのこと。CPは指定されてなかったのでこちらで勝手に決めさせていただきました。希望通りかどうか不安ですが宜しければどうぞ。

甘めにしようと思ったのですが(自社比較で)糖分低めになりました。構って欲しいサスケと、それに振り回されつつなんだかんだしっかり甘やかしてあげる彼ナルトの図を目指したつもりです。ちなみにサスケ→→→→→←←ナルトな感じです。ちなみに紫蘭はナルト信者な彼の部下です。オリキャラかもしれないし、誰か公式キャラさんかもしれないし。個人的にはヒナタ推しです。


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