かわいそうにね何が完璧な兄よ!今まで私達を騙してきていたのね?ダサい口、牙。あんなのがこの私の兄だなんて。ああ、恥ずかしくて今にも死んでしまいそう。
ああ、可哀想なナマエ義姉さん。あんなに素晴らしい人が、あの口裂け男の妻だなんて。
フランペは、自分が生まれる前からカタクリに嫁いできたナマエに好感を持っていた。
強いし、頭はいいし、何より顔が可愛い。私以外でカタクリおにー様に相応しい女。
もう義姉さんは私がばらまいた写真を見たかしら。さぞかし幻滅したでしょうね。
「ナマエ義姉さん!」
ちょうどそこにナマエの姿が現れたので、フランペは走って声をかけに行った。
「あら、フランペ」
「義姉さんはもうこれ見た?」
「?見てないわ」
フランペはこれみよがしに持っていたカタクリの口があらわになっている写真が載った記事を見せつけた。
「これよ!」
ナマエは記事をまじまじと眺め、そして、プッと少し吹き出した。
そうよね?笑っちゃうわよね?こんなバケモノが今の今まで義姉さんの夫だったのよ。とんだ詐欺師よね!
「やあね、こんなのとっくに知ってるわよ」
「え?」
「知ってて結婚したんだから。キスだってしてるもの」
どうして?何も思わないわけ?
「な、何も思わないの!?」
「別に?普段のギャップで可愛いと思うわ。これ言ったらカタクリはあんまりいい顔しないのよね。ふふ」
なんてこと。ナマエ義姉さんまで。
「相手の欠点まで愛することが夫婦円満の秘訣ってなんかの本に書いてあったわ。まあ私はカタクリの口を欠点とは思えないけどね」
そう幸せそうに微笑んだナマエ。皮肉にも、とても綺麗に笑った。
「つっ~~!!あったま来た!信じてたのに!もうアンタのことなんて姉と思わないから!!」
フランペはそう吐き捨てて、その場から立ち去った。
なんなの、なんなの、なんなの!
バケモノの妻なのに。どうして、あんなにも幸せそうに笑えるの?
「・・・まだまだ子供ね」
「あら、あなたもそう思う?ブリュレ」
ブリュレは鏡の中から一部始終を見ていた。
「・・・ほんと、あなたがカタクリお兄ちゃんの嫁で良かった、って思うわ」
「ありがとう」
そういうと、ナマエはまるで百合の花のように清らかな笑いを浮かべたのだった。
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