ぼくらは微妙なビヨンド

目が合うということは、相手も自分を見ているということ。

「だからって相手も自分を好きって思い込むのはやっぱ短絡的だよね」

半ば自分に言い聞かせるように呟く。目が合うだけで自惚れるなんて我ながらイタイ女だとは分かっている。

「...だからって一日に50回は目があっているのに両想いの可能性がないと決め付けるのも短絡的だと思いますわ」
「そう?」
「普通はそんなに目なんて合いませんもの。意識的に見ていないと」

ミモザは呆れて首を振った。もう結論は出ているとでも言いたげな顔だった。

「やっぱり、クラウスさんもナマエさんと同じ気持ちだと思いますわ」
「いやいやいやないないない」

この会話、何十万回した?最初は親身になって聞いてくれた後輩のミモザも、今では面倒くさい表情を隠しもしなくなった。こっちだってミモザの恋愛相談聞いてあげてるっていうのに。

「だって、あのクラウスだよ?堅物眼鏡だよ?眼鏡だよ?」
「...眼鏡は関係ないと思いますけど」
「だって見るからに恋愛経験乏しそうだし!」
「酷い偏見ですわ。そんなところも好きなくせに」

...ぐうの音も出ない。

「...あら、あれはユノさん?」
「え?」

向こう側から精霊を連れたユノが歩いてくる。その後ろには、件のクラウスが。そして例のごとくまた目がかち合った。

「待って、やばい、心の準備がまだ、」
「ナマエさん、来ますわよ」

慌てて顔を背けた。それでも、赤くなった耳は隠れていないだろうな。

「あら、ユノさんにクラウスさん。これから昼食ですか?」
「ああ...良ければ一緒に、と思ったのだがもう食べ終わってしまったか」
「残念ですわ。ねえ、ナマエさん?」
「え!うん」

声が裏返った。恥ずかしい。

「...ミモザ、お前も大変だな...」
「ええ、ユノさんも...」
「?」

ミモザとユノが、互いに同情の視線を送っている。なんのことかわからない私とクラウス。

「...決めました。この際言いますけどね、私とユノさんはイライラしているんです」
「え?」
「どういうことだ...?」

ユノもダルそうな視線を寄越してくる。一体私達が何をしたっていうんだ。

「最近、お互いよく目が合うと思いますよね?」
「ああ」
「うん」

それだけじゃないですよね?相手の一挙一動にドキドキして、無意識に目で追ってて。

「気づいてないのは当事者間だけ。周りはもうとっくに気がついてるんですよ」

四人は黙ったままだった。何も言わない私たちに痺れを切らしたのか、ユノが言う。

「つまり二人とも両...「その続きは言うな」」

クラウスがユノを遮った。私ももう、その先を察してしまったので何も言えなくなった。

「ナマエ、好きだ。付き合ってくれ」

彼なりの、最大級の告白だったんだろう。緊張の汗でずり落ちる眼鏡を中指で必死に押さえつつ、しかし眼差しは私を捉えてそう言い切った。返事は考えるまでもない。

「は、い」

***

「はぁー、ヒヤヒヤしましたわ」
「ここまで来るのに時間かかり過ぎじゃないですか」
「ユノ辛辣」

これはあとになって聞いたことだが、クラウスもユノに色々と相談をしていたらしい。なんでもこれが初めての恋愛だったとか。私の予想は正しかった。

「ああ、やっとこれで両片思いのウジウジした嫌な雰囲気が消えましたわね。息がしやすいですわ」
「一年間この雰囲気だったとか、ありえねー」

...いやなんでこんなに言われなきゃならんの??

ネタ箱より、"クラウスと両片思い"。ギャグ寄りですみません...。

ネタ提供ありがとうございました!!
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