薄衣の装甲

「きゃああ!何それ!?」

ブリュレに見せたらこの反応。たまらない。

「じゃじゃじゃーん。ゾンビ。」

私は今、ハロウィンの仮装をしている。少し前までホールケーキアイランドにはハロウィンというものが無かったのだが、海を渡ってハロウィンというものがビッグマムの耳に入った。それ以来、毎年この時期になるとあたりは一面不気味なハロウィンカラーで覆われる。
私は去年囚人の仮装をしたのだが今年はネタが尽き、去年の囚人服をミニスカにして着てゾンビメイクをするということで今年は落ち着いた。いやあ、足を出すと気分が高揚するねえ。

「気持ち悪っ!目が溶け出してる!」
「ありがとう!」
「褒めてないわよ!」

ブリュレもブリュレで、それとなく魔女の格好をしている。何もしなくても魔女っぽいけど。

「ブリュレ、トリック・オア・トリート」
「はいはい・・・」

ブリュレは私の手にお菓子のブリュレをおいた。表面のパリパリのアレ。それが私の大好物。

「やったー!」
「ほら、アンタもよ。トリック・オア・トリート」
「あ・・・・。ない」
「何で持ってないのよ!?」

____私は今、囚人ゾンビの格好をしている。つまるところ、囚人だ。手錠を両手首にかけて両手が不自由な状態なのである。そのせいでお菓子は作っていない。

「馬鹿?」
「うん」

ブリュレもほとほと呆れ果てて、お菓子は諦めたようだった。

「じゃあ悪戯よ」
「わわっ」

ブリュレは私をミロワールドに送った。

「・・・・どんな?なんの悪戯?」
「ウィッウィッウィ・・・」

まずい。ブリュレがこの笑い方をするときはたいてい良からぬことを思いついている。

「レイア、カタクリお兄ちゃんに、悪戯してきなさい!」
「出来ない出来ない出来ない出来ない!」

いくら自分とカタクリが婚約していても。あ、申し遅れました、わたくし、シャーロット・カタクリの婚約者です。

「ブリュレだって知ってるでしょ?悪戯出来る隙なんてないよ!完璧人間だから!」
「レイアなら出来るって。アタシはレイアのこと信じてる」
「急に飴と鞭使い分けるのやめてよ・・・」

ブリュレは容赦ない。とうとうカタクリの部屋の鏡の前まで連れて来られた。

「あ・・・」

部屋にいたカタクリと目があった。カタクリはフランケンシュタインの仮装だ。

「さあ!私はここから見てるから。せいぜい楽しんで来なさいな、ウィッウィッウィ」
「ま、魔女だ!」

問答無用で鏡に押し込まれたレイアは、鏡から落ちて尻餅をついた。

「あたっ」
「大丈夫か」

カタクリはレイアを立ち上がらせてくれた。

「カタクリ!仮装超絶似合ってるよ!」

可愛い!は心の中だけで言った。怒るから。

「ありがとう。お前も、、凄く本格的だな」

この格好を見て可愛いとは言えないだろう。目が片方飛び出てるしなんかリアルだし。

「えへへ・・・。あのね、ブリュレの悪戯でね・・・」

レイアはカタクリに事情を説明した。

「それで、なんか悪戯のリクエストとかある?」

悪戯を仕掛けたら殺されそうだから。もう開き直って聞いてみた。

「そうだな・・・。なら」

何を言われるんだろう。ドキドキ。

「今日一日、おれのそばにいろ。片時も離れず、だ」
「いいの!?」

ぼふっ、とカタクリに抱き着く。片時も離れずおれのそばにいろ、だなんてご褒美じゃない!

「・・・・わかってるのか?今日一日は”朝まで”だぞ?」
「えっ!そんな、結婚前に・・」

カタクリはレイアを近くにあったベッドに押し倒した。

「お前がそんなに足を出した格好をするからだ」
「ちょっ!」
「すまない、我慢の限界だったんだ・・・!」

カタクリはレイアに覆いかぶさった。



鏡の中から見ていたブリュレは顔を真っ赤にして、こんなつもりじゃなかったのに、と心の中で呟いた。

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