「たのもー!!」
ナマエは得意の蹴りでルフィの教室のドアを蹴破った。
「トッ高のミョウジ・ナマエです!ルフィ君いますか?」
ナマエは教室を見渡す。
「おっとーー??ここに可愛いレディーがいるじゃないか!!!LI〇E交換して?」
特徴的な眉毛の金髪男子が奇声に近い声を発してこちらに近づく。
「ルフィ君?」
「いや、おれはサンジ!ルフィなんかほっといておれと遊ばない?ナマエちゃん」
そんなサンジにお構いなしにナマエはルフィを探す。このあとはバイトもあるし早く済ませたいのだ。
「ちょっとサンジくん!その子困ってるじゃない」
「んんナミさァーーーーんん!!今日もお美しい!!」
蜜柑色の髪をしたナミと呼ばれた女子がサンジの頭を殴る。
「ルフィ君はどこですか?」
「ルフィなら、、今は罰則中かな・・」
「おお!どこで?」
「男子トイレ掃除だけど、あの馬鹿今頃もういないと思う」
ナミは大きく溜息をついた。日頃から随分と手を焼いているのだろう。
「それで?ルフィに用って?」
「まあ、色々あってね・・。振られに来たんだ」
「・・・ええっ!?それって告白するってこと?」
「おれもナマエちゃんに告白されたーーい!!」
「アンタは黙ってなさい!!!」
ナミの会心の一撃。
「そう。それで振ってもらって吹っ切ろうと思って」
吹っ切るも何もないんだけどね。
「そっか。ルフィ今頃学校の近くで肉食べてると思う」
「ありがとう!ナミちゃん!」
もっとナミと話したかったが、今はルフィに会いに行かなければ。
ナマエはまた走ってルフィのもとへ向かった。
______
こんなに兄・カタクリの機嫌が悪いのは、ミョウジ・ナマエが先月また新しい彼氏を作ったとき以来だ。その後一週間もしないうちに二人は別れたが。
いや、今回はその時以上かもしれない。なんてったって、相手が相手だからだ。
クラッカーは内心オロオロしていた。
今日、ミョウジ・ナマエはルフィに会いに行って告白をするらしい。そんなことをカタクリに伝えた馬鹿はどこのどいつだ。
「・・・麦高に行く」
ほら来た。また麦高との喧嘩だ。クラッカーは痛いのが嫌いだ。正直喧嘩なんてしたくない。
カタクリは”土竜”を持って立ち上がった。土竜ということは、かなり本気である。
(ナマエさん、あんた、なんてことしてくれんだよ・・・。)
有無を言わせぬカタクリの視線に貫かれ、クラッカーも渋々重い腰を上げた。
_____
「振ることを前提に、私と付き合って下さい!」
あれ?こんな告白あるのか?
「いいぞ!」
もっしゃもっしゃ肉を食べながらOKされた。つまりこれは振られたのか?
「ありがとう!」
とりあえず礼。だが恐らくルフィの言う”付き合う”と私の”付き合う”は絶対違う気がした。
とはいえ、これで。これで私とルフィ君が付き合うということは、なくなったはずだ。晴れてルフィとの失恋を乗り越えて(という設定)カタクリと付き合えることになるかもしれない。
ホッとして、安堵の溜息をつく。
「これ、いるか?」
ルフィが食べかけの骨付き肉を差し出してきた。
「いいの?」
確かにお腹が空いていたので、一口だけもらうことにした。
「じゃあ、一口だけもらうね。あーん・・・」
特に何も考えず、ルフィに”あーん”を繰り出す。ルフィも何も思わないようで、素直に肉をナマエの前に差し出した。
刹那、背筋を凍るような冷たい冷気が走った。
「ひっ・・・!」
その冷気の先を辿ると、長い棒状の何かを持った長身のマスクをした男が大勢の不良とともに立っていた。
「カタクリ!?」
なんか、やばいんじゃ・・?
そういえば、麦高のルフィとトッ高は因縁の関係だとかクラッカー君が言っていたような言っていなかったような。
あ、これ、なんかだめなやつ。私、死ぬやつ。
「・・おい麦わら、その女に近づくんじゃねェ・・!」
カタクリの怒気をはらんだ視線にも動じないルフィを初めて凄いと思った。
ふいに、カタクリの後ろに立つクラッカー君と目が合う。
クラッカーはジト目でこちらを睨んできた。え?なんか私のせいなの?
「おいナマエ・・」
「はい・・」
自然と敬語になる。こんなに怒ったカタクリを見たのは久しい。
「麦わらとはどういう関係だ・・?」
凄く困った。最早付き合っているのかいないのかも分からないし、でも友達?同じ肉を分かち合った仲間?どれもがしっくりこなかった。
「えと・・一言では表せない関係ですかね・・」
それがカタクリの地雷を踏み抜いたようだった。
「・・・あァ?」
ビキビキ、と本当にそんな音がするんじゃないかというほどにカタクリは青筋を浮かべた。
「てめェ・・!」
私、殺される・・・!!!
____
「はっ!!夢か!」
「夢じゃねェ」
「カ、カタクリ・・」
気づけばそこは自宅のベッドで。
ナマエはこの状況を理解出来なかった。
「あれ?私、カタクリに殺されて・・」
「何寝ぼけた事言ってんだ。おれがお前を殺すわけないだろう」
え、なら他の人なら殺すの・・?カタクリへの恐怖を再確認。
「・・・じゃあ」
「麦わらがどうなったかなんて知らねェ」
ルフィ君はどうなったの。と続けるはずが、カタクリに先読みされてしまった。
カタクリによると、あれから私はあまりの剣幕に気を失い、それからルフィ君となんやかんやあったらしい。
カタクリは先ほどではないが怒っていた。何か悪いことしたのかな。
「改めて聞くが、麦わらとはどういう関係なんだ」
「えっと、振られる前提で付き合ってもらってた。一瞬だけど」
「あ?」
目が怖いですカタクリさん。
「・・・あいつの事が好きなのか?」
「友達としてはね。恋愛対象じゃないよ。それに、・・・私好きな人他にいるし・・・。」
それはカタクリだよ。なんて言えたらいいのに。
「・・・・・」
こっちを見つめているようで、でも遠くを見ているような目つきのカタクリ。それはかつて見たことのないものだった。
「カタクリ・・・」
「・・・今日はあんなに怒って悪かった。遅いからもう寝ろ」
カタクリが立ち上がる。その目はもう怒っていなかった。
「カタクリ、なんかお父さんみたい」
私にはお父さんがいないけど、いたらこんな感じなのかな、と思う。早く寝なさい、とか言われるのかな。
「・・・・」
あんまり嬉しくなさそうだ。
「あ、やだった?ごめんごめんカタクリパパ」
「おい・・」
「ふふふ」
カタクリパパとか、面白い。
「・・・・ところで、倒れた私をどうやって家に運んだの?鍵開いてないよね」
今日はお母さんが出張で家には誰もいなかったはずだ。
「プリンが合鍵を作った」
「プ、プリンさあん・・」
親友を心の底から怖いと思った。
約束しないって約束して
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