悲劇も腐る

(カタクリ編と同じくらいの時間軸)

都内某所にある、中高一貫の私立高校。そこは世界中に今もなお進出を遂げているある有名お菓子メーカーが設立した学校であり、お菓子メーカーのワンマン女社長、通称お菓子界の”ビッグマム”の子供達は全員そこの出身だ。
会社名のトットランドから名前をとって、そのまんまだがトットランド高校という。略して”トッ高”。

私、ミョウジ・ナマエも今年から編入してきた一年生だ。

***

通常は男女別のクラスなのだが、一年生は人数が少ないので、この一年三組だけは男女混合クラス。そのため、他クラスの生徒から羨ましがられている"当たりクラス"だ。

「今日から編入してきたミョウジ・ナマエです。これからよろしくお願いします」

パラパラとまばらな拍手に迎えられて、その編入生はおれの隣の空席に座った。そこしか空いていなかったのだから仕方がない。
おれは横目でその女をちらりと見た。髪は染めていない。ピアスホールも見当たらない。校則違反が何一つ見つからない、何もかも模範的な生徒だった。


「よろしくね」

おれに話しかけたのかと思いきや、反対側のブリュレに対してだった。危うく反応しそうになってしまったではないか。



「さて、それでは早速委員決めをします。誰か、やりたい人は」

この割と荒れている学校にまだ委員会なんてものがあったのか。勿論生徒たちは寝るか携帯をいじるかのどちらかで、担任の話なんてこれっぽっちも聞いていない。担任ももう慣れっこなのか、何も言わなくなってしまった。

「はい」

教室の中で、ただ一人手を天井の方へ突き上げたミョウジ・ナマエ。中身まで模範的だった。

「風紀委員に、立候補します」

風紀。そんな言葉を聞いたのは何億年振りだろう。
助かった、と顔に分かりやすく出した担任はすぐに編入生を風紀委員に任命した。

これには皆驚いて、改めて変な物好きが編入してきたと思っているに違いない。

アンタ、変わってるわね。とブリュレが話し掛けるのが聞こえた。心の中で同意する。

「私、この学校を変えてやるわ」

そう自信有りげに話すミョウジ・ナマエ。変な奴、と思ってもう一度横目に見れば、化粧っ気のない素朴な顔が見えた。
ふと、化粧したら美人なのに、と思ってしまう自分がいた。

悲劇も腐る

ついにクラッカー編始動!!!




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