夢を召し上がれ

私はシンデレラになりたい。
下民出身な私が実は貴族の遠い親戚で、ある日舞踏会で王子様に一目惚れされて、それから何やかんやあってめでたしめでたし。それが私の夢。

それを話すと、ゾラに鼻で笑われた。

「絶対ありえね~~~~。第一、一目惚れされるようなツラでもねェだろ」
「ひ、ひどい・・・」

まあ、凄く自分勝手な夢だっていう自覚はあるけども。


王撰騎士団選抜試験で、ザクス・リューグナーと名乗る彼を見て驚愕した。彼がいつも持っていた人形そのものだったからだ。でもよーく見たら、髪とか目の形がゾラだったので凄く驚いた。しかもあの無口で大人しかったゾラが、相手をめちゃくちゃに罵倒しているし。
それから彼が、同じ黒の暴牛の団員であったことを明かした時にもとても驚かされた。私、コイツに驚かされ過ぎている。



「・・・ゾラの夢は?」

と言ってから、愚問だ、と思った。そんなの小さい時から知っているし、今も変わらないのであろう。そうだ、ゾラって一途なところがあるんだった。

案の定、そんなの知ってんだろ、と返された。


ゾラの夢は、"真の魔法騎士"になること。そんな立派な夢と私の夢を比べられちゃあ、なんだか私がバカみたいじゃないか。割と本気なんですけど。

「俺、お前が王族なんかと結婚して成り下がったら、思いっ切り軽蔑するわ」
「なんでよ!そこは祝福してよ!」
「出来ねーよ」

そうだった。ゾラは王族も貴族も嫌いだった。


「・・・俺がお前をシンデレラにしてやろうか?」
「え?」

ゾラが魔導書を取り出した。
__今、なんて?聞き間違いじゃなければ、私をシンデレラにしてくれるだって?
そんな告白じみたことを言われたら、女の子は誰だって赤面してしまうだろう。現に今、私だって。

「ほらよ」
「わあああっ!!」

ドサァァァ、っとナマエの頭上から何かが降ってきた。何これ!!

「ケホッ、ちょっと何すんの!!」
「"灰かぶり"」
「は?」
「バァ~~カ。シンデレラは、灰かぶりって意味なんだよ。晴れてシンデレラになったな、おめでとよ」

ゾラの魔法属性は灰。だからゾラはナマエに本物の灰を降らせた。

「物理的にじゃないんだってばー!!」

灰まみれの私を見て、腹を抱えて笑うゾラ。む、ムカつくーー!

「こんな灰まみれ女、愛しの王子サマは相手にしてくれねぇだろーな」
「誰のせいだと!」
「・・ま、ホントは嫌だけど、お前が売れ残った時は俺が仕方ねぇから貰ってやってもいい」
「すげえ嫌そうに言うじゃん・・」

だからさ、とゾラ。

「お前、売れ残っとけよ?」
「え・・?」

それ、どういう、と聞こうとすれば、また上からさっきよりも多い量の灰が。

「ギャアアア!目に入った!!」
「ぎゃあぎゃあうるせーよ」
「ゾラのせいでしょ!!」
「じゃあな」
「コラー!!置いてくな偽ザクスー!!」

結局、灰で動けなくなった私を置いてけぼりにしてゾラはどこかへ行った。今思えば酷い照れ隠しだ。


「あの時灰かぶせた事、一生許さないからね!ザクス!」
「俺は夢を叶えてやっただけだし。ザクスじゃねーし」

結局私は売り切れた。ゾラによって。恋人、という関係になっても凄く罵倒して来るし、それが全部正論だから腹立つし憎らしいけど、憎めない。彼に絆された私はもう重症なのだ。

「次の私の夢はね、私がゾラの夢を叶えてあげる事だよ」

と言ったら、ゾラに鼻で笑われた。

「絶対無理だろ、みたいな顔しないでってば」
「何も言ってねーだろ」


もう、ひとつは叶ったんだよ。お前を手に入れるっていう夢は。



いかがだったでしょうか。何しろゾラは初挑戦なもので口調が怪しいですが・・・。それにしてもゾラってかっこいいですね!アニメのエンディング食い入るように見てます。


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