そろそろ君の手を握ってもいいかい

真昼様リクエスト

注意)夢主がペロス兄に割と暴言を吐きます。

顔も悪くない。家柄も悪くない。ただ彼女との相性は最悪だった。

「おはようございます、キャンディクソ野郎」
「ああ、おはよう。クソ女」

親同士が決めた不本意な政略結婚のせいで、私達夫婦の仲は冷え切っていた。まあ、私が"どうせどこかの国の王女なんて温室育ちの何も知らないような女だ"と勝手な偏見を持っていたことも悪いのだが。

でもある時気がついたのだ。ナマエは(嫌々ながらではあるが)、妻としての役目はきっちり果たそうとしていた。下の兄妹たちの面倒見も良い。そして何より、毎日律儀に私を見送る。そして出迎えてくれるのだ。
私はこんな当たり前の幸せを与えてくれた彼女に感謝している。気付けば段々と、ナマエを邪険にしていた気持ちが消えていった。


そしてある時、お前が少し笑った様子が、まるで一輪の花が咲いたように見えた。私はそれを見て確信した。恋に落ちた、と思ったんだ。
だからナマエ、今夜私と・・

「そんな言葉で私が誘惑されるとお思いで?」

ナマエはペロスペローの甘い言葉にニコリともしなかった。彼女は手強すぎる。

「聞き飽きましたわよそのセリフ。毎日毎日自分で言ってて恥ずかしくないの?大体ね、最初にあんなに冷たく置物みたいに扱われて。信じられるわけがない」
「それについては悪かったと思ってるが、」
「今更好きになったってどういうこと?そんなはずないでしょ」

最早毎日の日課となっているこのやり取り。愛を自覚してからというもの、毎日のようにつらつらと甘いセリフを並べてみせるペロスペローだったが、最初に墓穴を掘りすぎて妻に何も信じてもらえていない。

「それは本当だ。お前を見ているとまるでガスに火をつけるみたいに、愛の炎がポッ燃え上がるんだ、ペロリン♪」
「そんな恋愛小説の一文を丸々引っ張ってきたようなクサいセリフを言われても一ミリも響かない」

言うこと全てを否定される。挫けそうになるが、全部自分が悪い。ペロスペローはまだまだ諦めていなかった。

「ナマエ」
「ちょっ!」

ペロスペローは彼女の腰を抱き寄せた。ナマエはこういった行動に弱い。恥ずかしがって何も言わなくなる。そこが可愛いのだが。

「おれたちは色々と順序を飛ばしすぎた。だから、まずは夫婦ではなく恋人として始めないか、ペロリン♪?」
「・・・恋人がいた事がないからわからないわよ」

おっと。いつもなら、"あらそう。夫婦をやめるなら、離婚届にはもうサインしたからさっさと別れて頂戴"と言うところだが今日は違った。確実に進歩している。
仲良くなれる日も近いかもしれない、とペロスペローは内心喜ぶ。

「最初のステップは、手を繋ぐところからだ。さあ」

ペロスペローは、だらりと力の抜けたナマエの腕を持ち上げる。そして指を絡めた。

「こういうのもいいだろう?」
「・・・人前ではやめてよね」

今日は凄い。いつもなら抵抗しそうなのに。たった手を繋ぐという行為だけで顔を赤くするナマエがいじらしくて可愛らしい。

「アンタの手、意外とあったかいのね」

妻がほんの少しだけ微笑んだ。それを見たペロスペローは今日を初手繋ぎ記念日と決め、忘れないと心に誓った。



いかがだったでしょうか。リクエスト内容は「最初は邪険にしていた妻を本気で好きになり、なんとか信じてもらおうと毎日口説くペロスペロー」との事でした!若干のペロス兄のキャラ崩壊です。お許しください。というか私もペロス兄に口説かれてみたい・・!

最後に、リクエストありがとうございました!今後ともよろしくお願いします。
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