失うものと得るものの天秤

匿名様リクエスト

全ては気のせいだ。この、未だに彼女を思い続けている感情があることなど。



「離婚届にはもうサインしておいた。後はお前が書くだけだ。さっさとしてくれよ、書かなきゃ離婚出来ないんだからなァ、ペロリン♪」

政略結婚の末に結ばれたナマエとペロスペロー。しかし、彼女の祖国が我らビッグマム海賊団を裏切り、間もなく離婚する事となった。

この国では裏切り者には容赦しない。妻であるナマエも例外ではなかった。

「・・・今までお世話になりました。ありがとうございました」
「あァ、もう行け。顔も見たくない」

口から勝手に冷たい言葉の数々が飛び出る。おれは、こんなことを言いたいのか?

酷い事を言われ続けてきたナマエだが、気丈な女だ、最後まで傷ついた表情一つ見せやしなかった。
それどころか、別れ際にも笑顔を見せてきやがった。家族を処刑され、もう帰る場所なんてないはずのナマエが、絶望がこれからも訪れると知っている彼女が。


「ナマエ」

島から出る唯一の船に乗ったナマエに声をかけた。彼女はそれに応じてくれたのだが、対するおれは何を言おうとしたのか、黙りこくるばかり。そのまま、船は出港した。
あっけない別れであった。


あのとき何を言おうと思ったのか。今なら分かるのに。

『いってらっしゃい』
『おかえりなさい』
『いつもお疲れ様』

『ありがとう』

毎日のように彼女から掛けられてきた言葉の数々。今さらその鮮やかさの残像が、今は迫り来るセピアとなって脳裏にこびりついている。
あのとき、おれの言葉は死んでしまったが、おれは別れ際、ありがとうと言うべきだったんだ。

ペロスペローは毎日、妻のいない家に帰るたびにもう一度やり直せないか、と何万回と後悔したくなるほどのつらい目に遭わされる。それからナマエに辛く当たった自分への収拾のつかない自己嫌悪に駆られる。冷めた愛を温めたところで、彼女が帰って来るわけではない。

蘇る記憶の数々。遠い目に映る幻想。それはペロスペローの胸を小突いて切なくさせるだけであった。

『ペロスペロー様、お慕いしております』


あのころを恋しがるのはきっと自分だけだ(たぶん、きっと)


いかがだったでしょうか。リクエスト内容は「元妻(離婚理由は彼女の祖国が裏切ったみたいな)の事が未だに忘れられず、冷たい態度を取り続けた事に後悔するペロスペロー」との事でした!ペロス兄って難しいですね・・、今回は彼の一人称を"おれ"にさせていただきました。それにしても萌えるシチュエーションですね・・!!切ない系もいいなと思い始めて来ました。

最後に、リクエストありがとうございました!今後ともよろしくお願いします。
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