二つの心臓と二十の真珠

4(モブしゃしゃる注意)



黒に映える白い肌。17歳とは思えない、色んな事を知ったというような凛とした目。
夏葵を一目見て、美しい、と高遠は思った。
それはまるで、あの時の少女の様…
高遠はイギリスで出会った日本人の少女を思い出した。

***

「お客様、申し訳ございませんがここからは徒歩でお願いします」
「あ…はい。」

ワゴンから降りるとそこにはたくさんの種類の薔薇アーチが目に飛び込んで来た。

「うわぁ!ステキ…」
「この薔薇のアーチを抜けると館がみえてまいります。アーチに使われている薔薇の棘は大変鋭いので、どうぞお気を付け下さいませ。」
「美しい薔薇には棘が付き物…さあ行きましょう夏葵さん」

言われるがままについて行く。

だが夏葵は招待されているという後輩の事が気になって仕方がない。

それに…アーチと言うより、まるで迷宮…

「ここです」
「!」
「ようこそ、薔薇十字館へ…」
「……」

その館は薔薇に埋め尽くされ、優雅さを放っていた。

「他のお客様は既に来ておられます。」
「え!?嘘、あの人ひょっとして…」

美雪がある人の方を見る。

「?どうした美雪?」
「あっ!?」

夏葵も気づく。

「白樹先生!?」

白樹先生は不動高校の生物教諭。

「金田一君に七瀬さん!それに普家さんまで!」

どうしよう、レポート出してないのに…

「何であなた達がこの薔薇十字館に…!?」
「それはこっちのセリフッスよ先生!」
「私はここで開かれる青薔薇の完成披露会に招かれたのよ。そういう君たちは?」
「え…えーと私達は〜…」
「私が誘ったんです」

高遠ナイスフォロー!好感度アップだね。

「貴方は…」
「フラワーアレンジメントをしております、遠山遙治と申します。夏葵さん達とは友人として昔から仲良くさせて貰っているんですよ。」

いや、今日が初対面なんですが。


集まったのは写真家佐久羅京、株式会社バイオ・フェス社長の祭沢一心、プリザーブドフラワーアーティストの冬野八重姫など、たくさんの薔薇に関わる仕事をしている人が集まっていた。

「あの、毛利さん」
「はい?いかがなされましたか?」
「ここに、私達の他に同い年くらいの方が招待とかされてますかね?」
「はい、招待されております。その方はもうじき来られるようです」
「はい…」

その時、館のドアが開く。

夏葵はその人物を見た。

「あれっ?夏葵さんじゃないスか!」

そこに居たのは、学ランを着た金髪の少年だった。ピアスの跡が目立つ。

「!?」

「夏葵サン、僕ですよ、秋間ですよ!」

「えっ?(名前)、こんなチャラ男と友達なのか?」

はじめは呆れる。

「よく見なさい、金田一君」

高遠が言う。

「あの制服は、秀央高校の制服ですよ。私が通っていたから確かです。」

「ええっ!?秀央高校…だと?」

はじめは信じられないようだ。

「夏葵先輩!久しぶりですね!あれから…「どちら様でしょうか。」

「えっ、」

秋間はたじろぐ。

夏葵は無視。

「夏葵ちゃん…顔見知りだってバレてるよ…」
「私コイツ知らなーい」

そこに毛利御門がやって来る。

「皆様、全員お集まり頂けましたでしょうか」

集まったのはこの13人。
・はじめ
・美雪
・夏葵
・高遠(遠山)
・秀央高校1年 秋間高雄(後輩?)
・不動高校生物教諭 白樹紅音
・写真家 佐久羅京
・バイオ・フェス社長 祭沢一心
・ブリザードフラワー・アーティスト 冬野八重姫
・花読みの歌人 月読ジゼル
・薔薇園経営 小金井睦
・織物師 禅田みるく
・世話人 毛利御門

招待客全員が揃った所で、世話人・毛利御門が館を案内することになった。

「案内なんていらんよ、ヒック、ここにある館の見取図を見て自分で行くから。部屋番号と鍵だけくれ」

ワインを片手に酔った小金井が言う。

「あー、私無理だわこの人」

夏葵がこっそり呟く。

「私も…」
「随分と気の小さそうな男ですね。昼間から酔わないとやっていられないほどの何かがあるのかも知れませんよ」

高遠が意味深に言う。

「何それ…」
「夏葵先輩の事めっちゃ見てますよ!GENTLEMANにモテますね。」
「英語やめろ」
「おっと!」

小金井がワイングラスを落とす。

「ちょっと!着物にかかったらどうするの!?この振袖は私がデザインした加賀友禅で、300万円もするものなんですよ…!?」

禅田みるくが言う。

ところが小金井と禅田はギクリとする。

「(知っているのに知らん顔をしている…。この人達前に何かあったのかな…?)」

はじめも高遠もその事に気づいたようだ。

「…毛利さん、早く鍵をくれんかね」
「申し訳ございませんがこの館は形が少々変わっておりまして、その説明を兼ねてやはり私がご案内致します。…鍵が失われるなどして構造上通過出来なくなっている区域などがあり…地下に降りねば入れなくなった部屋もございます。ご注意くださいませ。」
「まぁ…!鍵が失われて通れないなんて…素敵!この館はまさに迷宮そのものだわ!」

月読ジゼルが言う。

「げっ!俺の苦手なコモリウタコ系!あー、何か早く帰りたくなってきた…」

私も帰りたい…。まさか後輩がコイツのことだったとはね…。

夏葵は中学時代の事を思い出していた。

***

夏葵は不動高校には高等部から入学した。
中学校は地元・京都の不良が集う中学校。
後輩・秋間はその中学校の後輩で、最近上京して来た。
実は…夏葵の家はヤクザの家なのである。
表向きは京都有数の旅館だが、裏ではヤクザが集まって覚醒剤の取引をしている。
つまり、「犯罪者」の家なのだ。

高遠の言う理想の女性像の項目に「犯罪歴あり」となっていたらしく、非常に警戒していた。

その中学校でトップに君臨していた夏葵は、女王蜂やら京都の死神やら酷い呼ばれようだった。
要は、めっちゃグレてて危ないヤツという事である。

もちろんその恐ろしさは、後輩秋間も知っているようだ。

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