胡散臭いおっさん



ふと、意識が覚醒する。

目を覚ますと、暗くて小さな、牢屋にいることがわかった。


そういや、キモール隊の奴に頭殴られたっけ。

・・・あ〜、頭痛い・・・・。


横を見ると、私と同じように倒れているユーリ。



「これが騎士のやることかよ・・・。

 ファーストエイド」



術を唱えると、ユーリは光に包まれ、光が消えた頃には

ユーリの傷は消えていた。


お、やっぱ治癒術使えんのか。ラッキー。

私にもかけとこっと。


小さく喜んでいると、横の牢屋から声が聞こえてきた。



「そろそろじっとしてるのも疲れる頃でしょーよ、お隣さん。

 目覚めてるんじゃないの?」

「そういうウソ自分で考えてんのか?おっさん暇だな」



急に会話が成立したと思ったら、起きてたのか、ユーリ。


ユーリの返事に、隣の牢屋・・・まあ、レイヴンなんだけど。

レイヴンは悲しそうに言う。



「おっさんは酷いな。おっさん傷つくよ」

「自分でおっさんって言っちゃったよ」

「およ?なになに?女の子もいるの?」

「いねーよ。ここにいるのはオレと変態だけだ」

「ちょ!初対面・・・いや対面してないけど!

 何堂々と人を変態呼ばわりしてんの!?」

「事実だろ」

「そうだけどね!そうなんだけどさぁ!」

「くくっ・・・、お二人さん、おもしろいわね〜」



笑われた。初めて会話した人に笑われた。

もうお嫁にいけない!



「それにねお隣さん。ウソってわけじゃないの。

 世界中に散らばる俺の部下たちが、必死に集めてきた情報でな・・・」

「はっはっ。本当におもしろいおっさんだな」



わ〜、すっごい棒読み。



「蛇の道は蛇。ためしに質問してよ。なんでも答えられるから。

 海賊ギルドが沈めたお宝か?最果ての地に住む賢人の話か?

 それとも、そうだな・・・」

「・・・言葉長ぇ・・・」

「それよりここを出る方法を教えてくれ」

「何したか知らないけど、十日も大人しくしてれば、出してもらえるでしょ」

「ごもっともです。でも、それだと下町が湖になっちゃうんだよね」


水の中で生活すんのは魚だけで充分ですよ。

むしろ人魚にでもなってやろうか。



「下町・・・ああ、聞いた、聞いた。水道魔導器(アクエブラスティア)が壊れたそうじゃない」

「今頃・・・どうなってんだかな」

「悪いね。その情報は持ってないわ」



ちょ、見た!?今のユーリの寂しそうな瞳!

あああああああああ!!テラかわゆす!!

萌えええええええええええええええええええ!!!


横でハァハァしてると、ユーリがすごい冷めた瞳で見てきた。



「そんな瞳で見るなよ!照れるだろぃ!」

「やってろ」

「酷い!冷たいよ、ユーリ!」

「よし!おっさんが慰めてあげる!」

「ありがとぉぉぉぉぉ!!」



ついにユーリに溜め息付かれました。

自分、乙!!





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