悪い癖



「・・・で、エステリーゼは、これからどうすんの?」



このままここにいても埒が明かないと、ユーリは話を切り出す。

ユーリの問いにエステルは真っ直ぐ、迷い無く口を開く。



「フレンを追います」

「行き先知ってんのか?」

「先日、騎士の巡礼に出ると、話していましたから・・・」

「あ〜、あれか。帝国の街を回って、善行を積んでこいってやつ」



経験があるのか、それとも聞いただけで嫌なのか、ユーリは顔を顰める。

どんだけ嫌なんだ。嫌そうな顔もかっこいいけどさ。



「はい。だから花の街ハルルを目指します。騎士の巡礼では最初にハルルへ行くのが慣わしですから」

「となると、結界の外か」



二人は話を一旦切り、空を見上げる。

つられて空を見ると、そこにはこの街を魔物から守っている結界があった。



「・・・」



そういえばずっと疑問だったんだけど、この結界は魔物から人を守ってるんだよね。

でも、魔物の判断基準ってなんだろ。

『人間じゃないもの』って判断なら、ラピードも魔物だよね。

でもラピードは結界の中に居られるんだから、魔物じゃないんだよな・・・。



「ユーリさんは結界の外を旅したことあります?」

「少しの間だけならな。興味はあるけど、下町を留守にするわけにはいかないしね」

「ユイはあります?」

「・・・何が?」



色々考えすぎたせいか、エステルとユーリの会話を聞き逃してしまった。

うわ、やっちゃったなーおい。



「もう、さっきの話聞いてなかったんです?」

「ごめんごめん。ちょっと考え事してた」

「何考えてたんだ?」



エステルに謝り理由を話せば、思わぬところ・・・つまりユーリから質問がきた。

まあ私のどうでもいい考えだし、話すことでもないっしょ。

変な所を無駄に考えてしまうのは、私の悪い癖ですな。



「色々考えてたー。・・・で、何の話だっけ?」

「・・・」

「ユイは結界の外を旅したことあります?」



ああ、その話か。

・・・さて、なんて言おうかね。

実際旅はしたことないんだけど、そのまま言ったら私はずっと下町に居るって思われて、

後々ばれた時に面倒になるんだよな。

しょうがない、まあ結界の外の世界を知ってるのは事実だし。



「まあ、一応あるけど」

「本当です!?」

「・・・」



そこの「おまえ何言ってんだ」目線を送ってくるユーリには後で説明するとして、

とりあえず、そろそろ歩き出した方がいいかな。



「さ、これから私たち下町に戻るし、街の出口まで案内するよ。ね、ユーリ」

「・・・ああ」

「ありがとうございます」



先を促し、ようやく私たちは歩き始めたのだった。





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