無遠慮



騎士から逃げているとは思えないほどの騒がしさで進んでいると、

ふとエステルはある部屋の前で立ち止まった。



「この辺り・・・だったような・・・」

「・・・あんたの立ってるそこがフレンの部屋だろ・・・?」



ユーリが疲れたように教えると、エステルは納得したのか顔を輝かす。

素で間違えたのか・・・。



「・・・とりあえず入ろうよ」

「・・・だな」



部屋に入ることを促すと、

ユーリは遠慮なしにドアを開ける。ノックしようぜ!



「やけに片付いてるな・・・。こりゃあ、フレンのやつどっかに遠出かもな」

「おー、ここがフレンの部屋か。・・・エロ本ないかな」



部屋に入り、私は真っ先にベッドの下を除く。

いや、男の部屋入ったらやるでしょ。



「ちっ、ここにはないか・・・。引き出しの中かな?」

「あるわけねぇだろ」

「ユーリの部屋にもなかったし・・・。おまえらそれでも男あだぁ!?」

「人の部屋勝手にあさんな」

「そんな・・・間に合わなかった」



私たちの会話を無視して、エステルは口元に手をあて落ち込んでいた。

ユーリはエステルの言葉に反応し、頭を抑えてる私に背中を向ける。

ひどいや!!



「んで、一体どんな悪さやらかしたんだ?」

「悪さやらかしたのはユーリじゃん」

「どうして?わたし、何も悪いことなんてしてません」

「こんな女の子が悪いことするわけない!それぐらい分かれ!ユーリのバーカ!」

「なのに騎士に追いまわされるのか?常識じゃ計れねえな、城ん中は」

「ユーリ常識とか知ってんの?うわー超以外」



私の台詞全て無視した件について、少し話し合おうか。

そろそろ俺のガラスのハートがブロークンしちゃうぜ!



「あの!ユーリさん!」

「なんだよ急に」



突然エステルが大きな声を出したせいか、ユーリは少し驚いていた。

そりゃいきなり大きい声出されたら誰でも焦るよ。



「詳しいことは言えませんけど、フレンの身が危険なんです!

 わたし、それをフレンに伝えに行きたいんです」

「行きたきゃ、行けばいいんじゃないのか?」



ごもっともです。

だがユーリ。遠慮なしに人のベッドに座るのはどうかと思うよ。

私が言えた義理じゃないけどね。



「それは・・・」

「オレたちにも急ぎの事情があってね。

 外が落ち着いたら、下町に戻りたいんだよ」

「脱獄のままで?」

「ああ」



え、マジ?

真面目な顔で頷くユーリに、エステルは頭を深く下げる。



「だったら、お願いします。わたしも連れて行ってください。

 今のわたしには、フレン以外に頼れる人がいないんです。

 せめて、お城の外まで・・・。お願いします、助けてください」



エステルの身なりから見て、貴族の人というのは一目瞭然だ。

その貴族が、さっき会ったばかりの人たちに頭を下げてお願いするなど、

ユーリにとっては意外だろうと思う。

エステルの必死さが通じたのか、ユーリは小さく溜め息を吐く。



「わけありなのはわかったからせめて名前くらい聞かせてくんない?」



エステルが表情を明るくさせ、名前を言おうとした瞬間、

部屋のドアが吹き飛んできた。・・・私の方に。



「ひゃあっ」

「ちょおおおおおおおおおおおおお!?」



全力で横に避け、もともとドアがあった場所を見る。

そこにはとてもカラフルな頭で、無表情にこちらを見つめる、


暗殺者ザギがいた。





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