一人一題作品 | ナノ
弱点だらけの色男



―俺の名は新撰組副長 土方歳三。
『鬼の副長』それが世間での俺の通り名である。

その名のままに鬼の如く、眉間に皺寄せて怒鳴り散らすのは日常茶飯事だ。
まぁ、一旦隊務を離れりゃ、女にゃ滅法優しくするが…なっ。

今は隊務の真っ最中。たとえ女と言えど容赦しねぇ…これが鬼たる由縁なんだが…
今、まさに雷の如く罵声が響く。
その矛先は先日寺田屋より略奪し、今は頓所で女中として働く娘…小娘に向いていた。

「何度言やぁ、解んだ?お前ぇの頭は飾りか?ちったぁ、学習しやがれ!!」散々罵った。
いつもならキッと睨みを効かせて言い返す小娘だが、今はやけに大人しい…
ハッとして小娘に目を向けると泣いてやがる…
「小娘、泣いてんのか?」
初めて見る小娘の涙にどうしていいのか解らず
「すっ、すまん。つい言い過ぎちまった…」
バツが悪そうに頭をガシガシ掻きながら謝罪の言葉を紡ぐ。

云い寄って来る女は数知れず。女の扱いには手慣れてる。だから女の涙にゃ、動じねぇ〜嘘、偽りばかりだと解ってっから。
だけど小娘の涙は少しばかり違うと来た。この俺を惑わしやがる!
あぁ、一体どうすりゃいいんだ??

そんな事を考えているとさっきまで泣いていた筈の小娘の肩が小刻みに震えクスッと笑い声が洩れる。
笑ったかと思えば今度は更に大きな声で「あははっっ。本当だー!!!」と言いながら指で涙を拭った。

――何だ?

きょとんとしていると小娘が「土方さん、ごめんなさい。私、嘘泣きしたの。沖田さんからこうするといいよって教えて貰ってー」と一部始終話し始めた。

聞き終えると今迄拍子抜けして腑抜けた顔がみるみる真っ赤になり、眉間に皺を寄せ
「総ォ司ィィィィィ!絶対、許さねぇ!!今日こそは観念しやがれっ」
そこら中一帯に鬼の怒声を響かせながら走り出した。
一方追われる沖田は
「ふふっ。だって、土方さん。貴方の一番の弱点は小娘さんでしょ!」
ニヤリと笑いながら走り出す。
沖田から放たれた言葉にさっきとは別の意味で顔を赤らめた…

そんな『鬼』の想いを知ってか知らずか小娘は二人の追いかけごっこを微笑ましく目を細めながら眺めるのであった― 完。


弱点だらけの色男



■作者からヒトコト
 はい。こんなん出ました〜最近土方不足で病んでいたので妄想が暴走し…やっぱり弱点狙うのはオッキーしかいないでしょ!と。色男ぶりをどう出そうか考えに考えた結果…こんなお話になりました!楽しんで頂けると光栄デス!



■管理人より
鬼副長はこんな可愛い一面をもっているからこそ、愛して止みません。沖田さんと小娘ちゃんの2人が組んだら色男もたじたじですね。
卑呪那さん、ハートフルなお話をありがとうございました!




- 8 -


[*前] | [次#]

- ナノ -