「もうそんな季節ですかー」

   ファクトリーヘッドことネジキは、この無機質な部屋の窓から顔を覗かせ
   てそう呟いた。私はネジキの部屋にあった本を片っ端から読んでいってい
   る途中だ。春という季節はぽかぽか暖かくてとても良い。



   
   草タイプのポケモンの説明を読み終えたところで次のページを捲ろうとす
   ると、ひらりとピンク色の花びらが丁度本の間に挟まった。ふと顔を上げ
   たらネジキが腕にチェリムを抱えていて、後ろには桜の木が見えた。






   「こんな所に桜の木なんかあったんだ?」

   「そうみたいだねー」





   
   するとチェリムはネジキの腕からするりと飛び出して桜の木に飛び移った。
   どうやら仲間がいるらしく、どこかへ行ってしまった。よく見てみると部屋
   中に沢山桜が入り込んでいた。完璧にネジキの仕業なのだが。



   
   

   「それにしても本当に綺麗だね。桜なんて何年ぶりだろう…」

   「僕は結構毎年見てるよー」

   「そうなんだ…。私もこれからずっとネジキと一緒に見られるかな?なんて…」



   「それは違うよ」

   「え?なにが…?」






   するとネジキはすっと私に近づいて、頭に着いていたらしい桜の花びらを
   指でそっと摘んで私の手のひらにそっと乗せた。






   「どうせなら永遠に」


   そう言ったネジキは相変わらずいつもの少し眠そうな目をしていたけれど
   いつもより何倍もかっこよく見えた。












   
   ずっとなんていう曖昧なものより永遠の愛を語ろう
   (わーお、はなびらのまいだねー)(ネジキ…この部屋掃除するの私なんだけど…)


for Nuko
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