上流貴族の紳士淑女が集まる、この晩餐会。

王妃がメインテーブルへ着くとクロスの上に洒落たメッセージカードが添えてあった。


「あら?何方からかしら」


すらりと細く伸びた指によく栄える美しいマニキュア。

上質の紙をなぞる様に開いていく。愉快に食事を楽しむ和やかな空気が一瞬にして凍りついた。


「犯行予告ですって?!」


煌びやかなカードの中央に、ペンでシンプルに、でも確かに綴られている文字。

“午後九時に貴殿へ宝石を頂きに参ります”


時計へ素早く目をやると九時を知らせる時計の鐘が響いた――・・・。






意識が覚醒する。

周りを見渡しても暗いのでよく見えない。今一体何時だろうか。

7時、いや八時か?やっとの事で灯りを探し、時計を確認する。


「なに?!」


時計は今丁度、午後九時を指していた。

今夜は王妃の所へ宝石を盗りに行く予定だったのに。

がっくりと肩を項垂れた。





寝過ごした怪盗X


(あら、何も起こらないわね)
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