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ある放課後、禎と草が並んでザンプを読んでいると
「・・・・・・・話があるんだけど」
と、かずが暗雲背負ってやってきた。
「どしたの?かず。何かよれよれなんだけど」
怪訝そうに尋ねた禎を疲れ切った表情で見下ろすと、
「お前んところの子猫のことなんだけど」
と言う。
「子猫?」
「ナカがどうかしましたか?」
首を傾げた禎の横で、すぐに察した草が顔をあげた。
「あ、ナカやん?ナカやんの事って何」
するとかずは潤んだ目で2人を見てこう言った。

「アイツを・・・・野放しにしちゃダメだ」



『ラブポーション』



「あ」
「あれ」
部活のない美術室。
忘れ物を取りに戻ったかずは椅子に腰かけ窓の外を眺めているナカと出くわした。
ナオはいないのか、と一瞬考えたかずに、
「ナオはまだ来てないですよ」
とナカが言う。
「いや、別にいいんだけど」
慌てて言うとナカは
「隠さなくてもいいですよー。俺一人しかいなかった時のかず先輩の顔ったら」
とくすくすと笑う。
抜け駆けしたと言う後ろめたさがあるかずは何となくきまり悪くて、だからと言ってそそくさと逃げ出すのも気まずくて、かずはナカに並ぶように椅子に腰を下ろした。
ナカは何がおかしいのかクスクス笑っている。
視線を向けると、ナカはチラリとかずを見てこう言った。
「この前『月下楽団』ってお店でナオとデートしてたでしょ?」
その言葉に驚いてナカを見ると、ふふと笑って
「あそこ俺のテリトリーなんです」
と言う。
「え、そうなの?」
「キッチンの人手が足りない時だけヘルプするんで。あの日の料理、俺が担当でした」
「あ・・・・・そう・・・・」
唖然と返事をするかずを見てナカはまた笑う。
いつにないナカの様子に首を傾げたかずは気付いた。

「ナカくん・・・・もしかして酔ってる?」
「あ、判ります?」
「判りますって・・・どうしたの、一体」
「部活でアイス作ったんですけど、ソースに使ったリキュール、担当してたヤツがアルコールとばすの忘れてて」
「ありゃ」
「料理部全員酔っ払いです。俺、ちょっとそのまま帰れそうもないから酔いさましながらナオの顔見て帰ろうとここにいたんです」

確かにナカの頬は薄く染まり、ほやんとした目元やふわふわした態度は酔っぱらっている事を示していた。
「大丈夫?」
「帰るのに不自由する程度には酔ってますけど、少し休めば帰れますから」
ナカはそう言うと視線を窓の外に向けた。
誘われるように外へと視線を移動したかずにナカは尋ねた。
「ライブどうでした?」
「ああ、うん。良かったよ、すごく。あのヴォーカルの女の人、綺麗な声してるね」
「トッシーのギターもいいでしょ。俺、あの人以上に優しい音出すギタリスト知らないし」
そんな和やかな会話にかずがホッとした時だった。


「ナオとはもうキスした?先輩」

「うぇ?!」

ぎょっとしてナカを見ると、ナカはにこにことかずを見ている。
怒っている様子ではなく、純粋に好奇心で聞いてますと言う表情はかずの警戒心を緩めた。
「え、いや、それはその」
口ごもるかずにどう思ったのかナカはくふんと笑って
「いーなー」
と呟く。
そしてチロリとかずを見ると
「ズルイなぁ」
と笑い立ち上がり際ガツッとかずの座る椅子の足を蹴飛ばした。
グラリと椅子が倒れてかずがそのまま床に投げ出された。
ナカにやられたんだと思考が追い付いた時、自分に覆いかぶさるように覗き込んでいるナカと目が合った。
「・・・ナカ・・くん」
「俺だってナオの事好きなのに。先輩ばっかりズルイ」
そう言うナカの手が動いて殴られるのかと思ったかずは目を瞑った。
しかし届く筈のこぶしはなく、代わりに唇に柔らかい感触が降って来た。
(え?え?えええーーー?)
仰天して身動きがままならないかずから唇を離したナカはうっそりと笑うと
「間接キスww」
と無邪気な笑顔を浮かべた。

 

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