Boy meet boy【ナカ】01
「おはよう!草」
新入二日目、初めて草に声をかけたのが、ナカだった。
名前を覚えられていたことに、軽く草は驚いた。
「おはようございます。ナカさん」
草は丁寧に頭を下げて自分の席に座った。
最近ミステリを読みふけっている草は本のページを開き、文字に目を通そうとする。
が、なんとなく、内容が頭に入ってこない。
しかたないので本に隠れてクラスを静かに観察する。
本も基本描かれているのは『人』だ。
そして人に興味があるから草は本を読む。
人を見るのも根っこは同じだと思っていた。
ナカを意識したのはその時が初めてだった。
一見楽しそう。
まんべんなく話しかける。
だがどこか苦しそうに見えて…。
昔の自分に重なった。
草は愛想笑いも得意だったし、人から嫌われるのが嫌で良い人を演じ
そして一番嫌われてはいけない人間―『自分』から嫌われるようになった。
それは中学時代の友人に指摘され、影響をうけ方向転換できた。
それがよい方向かどうかはわからないが。
天然でアレが出来る人間もいることを草は知ったが、自分もナカもおそらくそういうタイプではない。
そんな事を考えていたら、チャイムがなった。
この分厚いミステリを読み終えるのは暫くかかるかもしれないと思う。
草は本を同時進行で何冊も読んでいる。
朝は気に入りの本、昼は学校の図書室にある司馬遼太郎を制覇しようと思っている。
帰りから放課後はライトノベルズかファンタジー、恥ずかしいので誰にも言わないが寝る前は漫画か童話だった。
数日ナカの様子をみていた草は目を細めた。
ナカが慣れない女子に悪意あるマスコット扱いされていたのを見つけてしまった。
草は心の中でつぶやく。
愛想がいいとこういうトラブルに巻き込まれやすいんですよね…。
相手は軽い遊び心のつもりでも、戸惑い傷つく方は痛いと何故わからないのか。
草は眼鏡をくいっとあげて立ち上がる。
自分からアクションを起こすことは好まない草だが、自分の目は信じている。
いい奴を気軽にからかうのは許せない。
「ナカさん、ちょっと話があるんですが良いですか?」
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