興味津々01



放課後、めずらしく美術室に向かって歩く鹿月は、大量の和紙を抱えていた。
「面倒な事押し付けやがって…」と書道部顧問への悪態をつきながらぐんぐん廊下をつき進む。
美術部の造形班が何やら和紙を使うらしくて、持って行って来いと言われた。きっぱり断ろうとしたが、そのまま帰っていいと言われたため承諾したのだった。
オレの道具はあの顧問が片してくれんだ。だったら普段より筆もきれいになる。不幸中の幸いとして捕らえておこうと思ったのだ。
美術室の戸を引くにも両手が塞がっていてできそうにない。


「あれ?」

「お前…えっと名前何だっけ?」


申し訳なさそうに眉をゆがめたら、先日の書道室で会ったときと同じように名を名乗ってくれた。


「そうだ、ナカだ!!
 オレ名前覚えんの苦手なんだ、許せ。
 あと…悪ぃんだが開けてくんねーか?」

「はい!」


ふと見れば、やっぱりコイツは例の如く弁当であろう荷物を持っていて、オレよりも重そうな荷物なんだが…如何せんオレの持っている大量の和紙はバランスを崩せば一気に雪崩が起きる。
それを察してくれたのか、ナカは手早く戸を引いてくれた。


「助かった、どーもな。」

「あ、いえ!
 俺も用事があって美術室来たから…」

「で、その用事は?」

「かず先輩いないし…」

「何?かずに用事??
 あいつ放送室行ったの見たけど。」

「え!!そうだったの?!!」


うーん・・・と悩みながらナカは視線を床におとす。


「早く行けよ。
 あいつに用事なんだろ?」

「・・・お礼言うだけなんで。
 この前の上着のお礼。」

「あー、乱れた寝てたときな。」


思ったままを口にしたらナカの頬が赤くなっている。
鹿月はその姿に少しだけ動揺した。
何、コイツ。むっちゃかわいい顔すんな…って何考えてんだよ。
・・・今日のナカはパッチンどめをしている。
男の癖にピンクが似合うなんて何処ぞの同級生だ?と特定の人物を頭に思い浮かべたりした。
 

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