開いた期間とその変化01
んー!!と大きく伸びをした後、学校に間に合うようにちゃんと時計を確認してから自宅を後にしたはずだった。
「はぁ……」とため息を吐きながら教室へと足を向ける。
「うっ…なんかすげー久しぶりに来たら教室の感じも変わった??」
独り言を漏らしながらも自身の席へと歩みをすすめ、最後列の窓際の席へ腰をおろす。
「あれ??鹿月だぁぁ!久しぶりー!!」
「あ、えりち。はよー、久しぶり。」
「おはよ!でも…もう昼休み終わるよ?」
デザートなんだろうか。
もうなくなりそうなチュッパチャップスを咥えながら、えりちは鹿月にそう伝えた。
「ちゃんと間に合う時間に出てきたんだけどな。 途中公園寄ったら雲がいい感じだったから、ずっと写真撮ってたんだよ。」
「今ある?みせてみせて!」
2週間も無断で休んでいたオレに何にも聞かず、今までと変わらない対応をするえりち。そんな友人になんだか救われた気がした。
…柔らかい。
いつも思うが、些細な事で(今なんて写真を見ているだけ)そんな笑みを向けられたら、こっちだってふっと笑いが漏れてしまう。
鹿月の視線の先にはデジカメの写真を送りながらニコニコするえりち。
「その次いい写真あんだ。次に送ってみ?」
次の写真は明らかにここいらではない風景。
映し出された瞬間に瞳が大きく開かれたえりち。
その姿を見ながら「ははっ」っと声に出して笑ってしまった。
「オレ、2週間休んだだろ?その山にいってたんだ。」
「山?」
「山に登りたくなってさ。」
「また急だねー」
「いつもの事だろ?オレは思い立ったときに動かなきゃ面倒になって何もしねーもん。」
そうだった!と思い出したようにこちらを向いたえりちがニコリとする。
あ〜〜、癒される。
「んあ、そーいやさっちん(禎)は?いっつも一緒にいた気がすんだけど。」
「よっちと一緒にトイレ行ったからもーすぐ戻ってくるよ、多分ね!」
「よっち?」
「同好会入ってるからそのうちあえるよ!ちゃんとご対面した時に紹介したげるよ!」
デジカメを返すと同時に、鹿月の席後方にあるゴミ箱へ食し終えたチュッパの棒を捨て「もう席に戻んなきゃだね!」と歩いていくえりちの後姿に手を振った。
時同じくして、トイレから戻ってきた禎がキャーキャーと女子に囲まれる様子は2週間前も見た光景であった。
机に突っ伏せながら視線を空に向けて、この開いた期間に変わった友人達の状況を少しでも把握しておかないとついてけないかもな、とゆっくり昼寝の体勢に入る。
昼から登校してきたくせに、殆どが机とお見合い状態で寝ていた。
気がつけば授業の終わりを告げるチャイムが鳴っていて…おもむろに立ち上がって窓の外を見る。
澄んだ空と白い雲。
あそこで見たらもっと気分がいいだろうな…なんて思い立ったら即行動。
さっそく特等席のある部室へ移動を開始した。
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そりゃ期間が空けば部活だって久しぶりで。
顧問に挨拶をして、ずっと置きっぱなしの自分の道具に手を伸ばす。
国語科の教師の割にはテキトーなコイツは教師っぽくなくて嫌いじゃない。
近々、書道展があるらしく「お前もなんか書け。」と言われた。
「なー、テーマとかねぇの?」
「好きに書いて良い。ただ、半紙のサイズはこの二種類。文字制限やお題は指定無しだ。」
「御意」
15時をすぎたあたりで授業が終わり、15時30分から始まるはずの書道部。
もうすぐ人が増えてきて先輩やら同級生やら、そっとして置いてはくれない部員たちの質問攻めが始まってきっと鬱陶しくなるだろう。
だからこそ早めに書道室に入り風に流される雲を見ていた。
オレが書道室に入ったのは、ホームルームを無視して来たため、他の部員よりも早めだったはず。
本当にこの顧問はめんどくさい事は聞かねーから楽だ。
そんな事を思ったらふと、えりちが脳裏を過ぎった。
‥‥アイツは癒しだけど、コイツはよくわかんねーポジションだな。
どっちにしたってオレにはいい意味で気を抜ける人達だ。
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