スパイラル《禎、草》




「りーんちゃん」

今日は生憎の雨。
学食に集まる仲間達。
鬱陶しい筈のじとじと雨も、高校生のパワーには敵わない。

「なんだよ」
「そんな顔してもチョコついてたら怖くないよ」

食事を終えてヤンヤンを食べようとした時に、芳紀に手をぐいっとやられて口の脇にチョコがついているりんのすけ。
ティッシュ片手に若干ご機嫌斜めな一年生。
原因となった芳紀は今日もアイスを買いに席を外していて。

禎達は今から昼食らしく、先に食べ終えているりんのすけ達を待たせない為に違う席を探す。



「いつ行っていいの?」
「なにが?」
「りんちゃんち」
「あれマジだったのか?」
「あったりまえじゃーん、俺はみんなと仲良くやっていきたいの!!」
「だから面白くねぇって」
「それは俺が決めるし」

りんのすけは拭き終わったティッシュを丸めてトレイにぽんと投げると少し考える。

「禎さん、凛さん困ってますから」
草が助け船を出すけど、禎は気にもしない。
「草ちゃんも一緒に行こうよ、みんなでりんちゃんと仲良くなろうツアー!!」
草は困った人だ、とでも言いたげで。
「凛さんには凛さんのペースってものもあるんじゃないですか?」
「えーいいじゃん!!この前いいって言ってくれたもん」

りんのすけは諦めた様に「ご自由に」とだけ言った。


「じゃぁ適当に仲間内に声かけるからみんなで遊ぼ!!
そんでプールとか行っちゃわね?
で、疲れたらりんちゃんち行って雑魚寝とか」

禎の中でだいぶ盛り上がってるみたいだし、どうやら夏休みの話しらしい。
しかも、随分大きな屋敷だとでも思っているのだろうか。

りんのすけは、草に嬉しそうに計画を話す禎の後ろ姿を無言で見送ったけど。


“婆ちゃんに言ったら大広間使わせてくれるかな”“タロちゃんと弁当小僧も来るかな”などと考えていた。
そんな自分に苦い笑いを浮かべる。

仲間は裏切るって知ってるけれど、どこかに期待を抱く自分がいて。
それが全然悪くなんかなくて。
りんのすけは自分に呆れながらヤンヤンに口をつけ、ラムネをざらっと流し込んだ。




おしまい。


 

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