終幕



「な、なに…!?」

「ちょっと乱暴すぎません?レディにはもう少し優しくした方がいいんじゃないかしら」



シノブを守るように立つ一人の男。

王宮の執事服を身に纏い、眼鏡を掛けており、滑らかな長髪は頭の後ろで一つに束ねられている。

男はシノブに掴みかかろうとした兵士を一瞬で地に伏せた。

あまりにも鮮やな動きに、その場が静まる。



「さて、推理の続きといこうかしら。」

「…い、いいだろう。しかし証拠を出してもらわないと困るぞ」

「もちろんよ」



何事もなかったかのように推理の続きを促すシノブに、コナンは再び蝶ネクタイ型変声期を構えた。

男が気にならないわけでもないが、変装しているとはいえ、姉の前に立つ男には心当たりがあった。

顔を隠し、髪形を変えていても、肌の色と体格で判断できる。

コナンは推理を再開した。



「ジラード公爵、貴方の証言が本当なら、この王子の銃がサクラ女王を撃ったということになりますよね」

「ああ…その通りだ。だからどうした?」



未だジラードの表情は余裕たっぷりだ。

怯む様子もないその様子に、シノブが笑みを浮かべる。



「すり替えたんじゃないですか?王子の銃と、貴方が二人を撃った銃をね…」

「!?」

「じゃないと、撃った後に出てくるライフルマークによって、自分の銃から発砲されたものだとわかってしまうから…」



明らかにジラードの顔色が変わった。

自分が話をしているわけではないが、ジラードを追い詰めていくのがシノブの快感になってきていた。

演技でもなく、自然と悪い顔になっているのが分かる。



「しょ、証拠を見せろと言っているだろ!!」

「仕方ない…小五郎おじさま?」

「あいよー!」



小五郎が持っていたライフルをジラードに向けて発砲した。

一瞬空気が揺れる。



「…カイルさんに持ってきてもらったこの銃は、貴方の銃の筈なんですが…なぜそんなに驚いてるんです?」

「く、空砲だと…」



ジラードはその場に尻をつき、呆然と小五郎が持つライフルを見つめている。

当然だ、ジラードが当時猟と二人の殺害に使用した銃は王子の銃として警察に押収され、王子が使っていた銃をジラードが持ち帰ったのだから。



「…王子の銃は元々空砲だったんですよ。サクラ女王が動物たちの命を奪うことを、王子にして欲しくなかった。女王が王子に弾丸を抜いた弾を渡したんです。」

「まさか…そんな…」

「王子の銃ではサクラ女王も、王子自身も、殺せるはずがないんですよ」



視界の端でミラ王女が顔を覆ったのが見えた。

こんな、身内同士の殺人なんて、少女と言える年齢の彼女にはキツいだろう。

それに、これからは王としてこの国を背負うのだ。

…犯罪者には国は任せられない。



「ふふ、ははは!もういいよ、お嬢さん…いや、ひとつ聞いておこう。私が犯人だとしたら、なぜ証拠も消さずのこのことこんな場所にいるのかね」

「…それは、邪魔者をここでまとめて消すため、かしら?」

「さすがだな、ご名答だ」



努めて微笑んで返すと、ジラードはニヤリと下品な表情を浮かべた。



「実は真ん中の柱には仕掛けがあってね、このボタンひとつでみんなで仲良く女王の元にいけるようになっている。」

「…なるほどね」



何か考えがあるのだろうとは思ったが、そんな大胆な策だったとは。

下手をすれば自分も巻き込まれるというのに、殊勝なことだ。

推理ショーはぎりぎりで犯人の自白に終わった。

もうコナンがシノブの口で話をすることはないだろう。

今はジラードがキースへ、自分の方へ寝返るよう説得をしているようだ。

シノブは降谷と目配せし、出方を窺がっていると、隣で金属音が聞こえた。



「な、なんだ〜?!」

「ドサクサに紛れて逃げられては困るからなぁ、ルパ〜ン?」



こちらはこちらで忙しい様だ。

しかしこんなシリアスな場面でごちゃごちゃするのは止めてほしい。



「ちょっと、空気読んで!警部も、今はルパンよりジラードでしょうが!」

「「す、すみません…」」



一喝して睨み付ける。

近くでその様子をみている蘭は、何が起こっているのかまるで理解できていない。



「これで最後だ!死ねぇ!!…っ!?」



「スイッチ、入れたわよ〜」



ジラードの起爆装置が弾き飛ばされたのとメイドの一人に扮した不二子がステルス装置のスイッチを入れたのはほぼ同時だった。



「ジラード様!」

「くっ…狙撃だ!何者かがこちらを狙っている!!くそ!お前たち!やれ!!」



ジラードの合図で一切に兵士がなだれ込んでくる。

降谷はシノブの前に立ち、向かってくる兵士をなんなく薙ぎ倒す。

背後から迫る兵士に関しては、見事に致命傷を避けて狙撃されていた。

一通り掃討したところで、ミラ王女がジラードへ引導を渡す。



「この国の王は…この私です!」



涙を浮かべながらも強い眼差しでジラードを見据える時期女王を、キースやカイル達王宮の者は眩しいものを見るように目を細める。

シノブ達の目にも、ミラの姿が大きく見えた。

これで事件は解決したのだ。

そうみなが思っていたとき、シノブはふと思い出した。

先ほどのタイミングばっちりの赤井の狙撃後…



「ねえ、結局ジラードは押してないけど、地面に落ちたとき起爆装置は作動したように見えたけど…」

「な、なんだって!?ねえお姉さん、その装置の効果はあとどのくらい続くの!?」



コナンの剣幕にも動じず、不二子がにっこりと笑って答える。



「あと3秒かな?」

「みんな飛び込め〜!!」



その合図と同時にシノブは降谷に腕を引かれ、抱き上げられる。

そのまま守るように抱きすくめられながら湖へダイブした。

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