キリリク T
私は工藤鈴音、16歳。苗字を聞いたら察してもらえると思うけど、あの高校生探偵"工藤新一"の双子の妹なの。
スゴイでしょ?何がすごいって、そりゃあこのポジションもそうだけど、私は別の世界から来たのよ。
私の世界ではこの世界はマンガの中の物語だったわ。いつも憧れてた。
そりゃ好きなマンガなんだから、その世界っていったら理想の世界だもの。
ある日向こうの世界で事故にあったらしい私は、気づいたら病院のベッドで横たわる自分を見下ろしていた…。
ああ、自分は死ぬんだわ、って他人事みたいに思ってた。
けれどどう?今の状況は!これがよくいう異世界トリップってやつよ!
神様がどこかで私の頑張りを見てくれていたのかしら…。
物心ついたとき、両親と隣に立つ新一を見たときは興奮した。
やっと私の世界が始まるって!
そう、ほんとうに思ったのよ…最初はね。
「…行ってきます。」
「いってらっしゃい鈴音、気を付けるのよ」
私と新一は生まれたときは一緒だったはずなのに、やっぱり原作と一緒、両親の才能を受け継ぎそれを開花させていった。
…それに比べて私はどう?顔だって、身体能力だって、成績だって!前の世界の私のまま!!
他にもおかしいところがあるわ。
原作にもアニメにも出ていなかった女が、この世界には存在する。
それが今挨拶を交わした彼女"工藤シノブ"
工藤家長女で、私たちの姉にあたる人物。
おかしくない?こんなメインのポジションなのに、原作にもアニメにも出ていないなんて…!
しかもこの姉はちゃんと両親の才を受け継いでいた。
父のように頭脳明晰でミステリー小説を書きながら、趣味でブランドを立ち上げ、母のようにメディアに取り上げられる。
自らは露出しないようにしているみたいだけど、周りは放っておかない。
小説の新刊が出るたびに、ブランドの新作が出るたびに、両親の二世として持て囃される。
「…ねえ、いつまで私はここにいればいいの?」
「そ、それは…昴さんにお家を貸してあげたから仕方ないでしょ。」
「部屋、余ってるんだから一緒に住んでもいいのに。私は自分の家がいい。」
「…我儘言わないの。昴さんは優しいけど、男の人なんだから、二人っきりにはさせられないよ。」
わかってね…ごめんね…、そう言いながら私の頭を撫でる。
違うでしょ。
こうやっていつもコイツは私の蚊帳の外に置く。
何もわかっていないと思って…。
赤井さんと私を関わらせないためでしょ。
「あ!コナンくん、おはよー」
「シノブさん、おはよー」
「おはよう!」
「…おはよう、鈴音さん」
そのせいで…そのせいでそのせいで!
この女が邪魔するせいで、私が何度も何度もこれからの事件だったり予告だったりをしてあげてるのに、誰にも信用されず、皆が怪しい目でこっちをみてくる!
「ねえ新一、パパとママとどんな約束したか知らないけど、私、家に帰りたいの。いつまでこの人のところにいないといけないの?」
「…鈴音さん、僕、新一お兄ちゃんじゃないよ?なにいってるの?それに、シノブさんは鈴音さんのお姉さんでしょ。行くところがないんだから仕方ないじゃない。シノブさんだって、お仕事もあるんだから、大変なのは鈴音さんだけじゃないよ。」
ね?と有無を言わさないとばかりに笑顔で捲し立てられる。
「それに、本当はシノブさんだっていずれは安室さんと住む予定もあるんじゃない?それを邪魔してるのは鈴音さんかもよ」
「なっ…コナンくん!大人をからかうんじゃないの!」
ありえない。
こいつのせいで、こいつのせいで私は両親に大事にされなくなった。
こいつのせいで、新一が私に見向きもしなくなった。
こいつのせいで、憧れた世界から遠ざけられる。
どこで間違ったのだろう。
原作もアニメも、よく知っている私が、どこで…
いや、私は正しい。
間違っていない。
知っているから、間違えるはずない。
イレギュラーな存在がいるから、物語も変わってしまったんだ。
私の憧れた世界を変えたのは、この女だ。
のうのうと、皆から頼りにされ、周りから愛され、私の世界を壊している。
今も笑顔で私を監視している。
「…鈴音さん、どうしたの。すごく怖い顔してるよ?」
「…なんでもないよ、コナンくん。」
「そう…?あんまりシノブさんに我儘言ってると怒られちゃうからね。」
その日わたしはこれまでの生活に一度ピリオドを打つことにした。
幸い、この女は私が口以外で歯向かうとは思っていない様子だった。
家を空けることも多く、機会はいくらでもあるのだ。
手始めに、高校から帰った私は、さっそく不眠と称し睡眠薬の処方を受けてきた。
簡単な手だが、あの女が仕事で疲れて帰ってきた日に、睡眠をよく摂った方いいと言いながら睡眠薬を渡す。
どうしても眠れない、とキツめの睡眠薬を強請って処方してもらったのだ。
朝まで目が覚めることはないだろう。
「…強盗を装って殺してしまえばいい。」
なぜこんな簡単なことを今まで思いつかなかったのだろう。
胸が高揚感でいっぱいになるのを感じた。
早く、早くその日が来るといい。
しかしその思いとは裏腹に、あの女はいつまで経っても帰ってこなかった。
仕事でどこかへ飛んでいるのだろうか。
そう思い、機会を窺ったまま3日が経った。
昨日、あの女から今日の便でアメリカから戻るとメッセージがあった。
いよいよ、この時が来たのだ。
ピンポーン
インターホンが鳴る。
あの女ならばもちろん自宅の鍵を持っているはずだ。
宅配便かもしれない。
用心を重ねてモニターを覗くと、大きなキャリーバッグと荷物を持ったあの女だった。
「…インターホン鳴らすの、珍しいね」
「手が塞がっちゃってて…ただいま、鈴音!」
「おかえり…疲れたでしょう?早く中に入って…」
仕方なくバッグを持ち、中へ促す。
その後は用意した食事にもこっそり睡眠薬を入れ、入浴を促した後にも、錠剤で飲むように促すのだ。
「いいえ、遠慮するわ。入るのは貴女よ。」
「は…」
バチッ
あの女のムカツク顔が笑顔に歪んだところで、私の意識は飛んだ。
あの女を殺さないといけないのに…。
なんだかぼんやりと意識があるのに、どうしても目が開かない。
苦しい。
身体が痛い。
やっぱり、あの女は私の敵だった。
小さい頃から自分だけ私に優しくして。
いつも手を引いて世話を焼いて、油断させていたんだ。
巻き込みたくないなんて綺麗事を行って除け者にして。
世界中で一番最低な女だ。
「このキャリーバッグいいわね。今度また任務に行くときに使おうかしら。」
「…止めておいた方がいいですよ。それにこれは、そのまま捨てるんですから。」
「それもそうね。本当にあの子が帰ってくる前に全て終わらせたほうがいいわ。」
「ええ…コイツの監視をしないですむと思うと清々しますよ。ご協力ありがとうございました。」
そろそろ意識もふわふわしてきた。
次に目が覚めるときには、私の憧れた世界にいるかしら。
「じゃあね、Goodluck,Baby」
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7777hitキリリク
if的設定
【嫌われ主に近い傍観主で平凡タイプな新一双子な妹が工藤家にいたら】
工藤夫妻は自分達によく似た夢主と新一しか見ておらず自分達所か夢主達にも似たところがなく自分達を生まれる前から知っている発言をする(転生愛され狙いな)妹主に不快感さえ持つようになる。幸い夢主や新一の用に世間に知られた有名人ではないので周りには末の娘の存在を恥だと思い隠している学校でも蘭達にも新一や夢主の妹とは思われていない別のクラスということもあり他人だと思っているコナンの姿をした新一に赤井が住むから出ていけ扱いをされて済むところすらなくなった最に夢主が同上して引き取る。その事実を降谷がコナンから聞かされる。
妹主が転生愛され狙いで自分が愛されないのは夢主のせいだと思い陥れようとするのに降谷が気づき組織側で夢主をシャロンとして可愛がっているベルモットに告げ口して彼女の怒りを買い殺され排除される設定。純黒の悪夢後辺りの話で降谷さんもコナンが新一だと知っている設定。
というリクエストでしたが、どうでしょうか…。
長い時間待たせてしまってすみません。
大月の小説にするのに時間がかかりました…。
悩んで悩みぬいた結果、ifとはいえベルモットの出し方とかも凄く悩んでしまって…。
リクの設定を活かしきれていませんが、お許し下さい…。
梨華さんのみ、お持ち帰り可です!
では!