撃ち落とす




観覧車の瓦礫の隙間から暗い空を覗く。


集中攻撃を行っていた機体は、今は形を潜めている。


どうにかして奴の本体が見えれば、弱い部分を叩くことも出来るだろうが…。




赤井は内心焦っていた。


空から銃撃されたのでは、建物の中にいる自分たちは逃げ回るしかない。


そしてそれはいつか限界がやってくる。


まさに袋の鼠だ。




「赤井!!」


「…降谷くんか。起爆装置は無事に解体できたようだな。」


「当然だ!」





赤井の置いていったライフルバッグを背負い、降谷が駆けてくる。


自分の武器はライフルのみだ。


且つて、敵にしたくないと言った言葉は嘘ではなく、彼が来たことにより、今後の反撃する手立てが見つかるかもしれないと思った。


自分が信用できる人物は元々少ない。


FBIでも、ジェームズやジョディなどの固定メンバー、それに江戸川コナン、それと…




「…降谷くん、シノブはどうした。」


「気安く呼び捨てにするな!…シノブさんならやることがあると、俺が起爆装置を解体している途中で走っていってしまったんだが…」




彼女をファーストネームで呼んだこと(前から呼んでいるのだが)に対して過剰に感応する彼に、とうとう上手い具合に収まったか、と笑みが零れる。




「え、お前なに笑ってるんだ、気持ち悪い。」


「いや…君が素直になったみたいで良かった。」




そう告げるとさすがに何のことかわかったのか、思い切り睨み付けられる。




「言っておくが、お前のお陰とかじゃないからな!それに…」




彼らしくなく、言い淀む様子に赤井は内容を察するが、先を促す。




「どうした。君らしくないな、黙り込むなんて。」


「五月蝿い!お前もシノブさんのことが好きだったんだろう!」




さすがに手は出てこなかったが、キツく睨みつけてくる彼にまた笑みが漏れた。


彼は彼なりに俺に気を使っているらしい。


先ほどまでに本気でやり合っていたとは思えないくらいだ。




「…俺だったら、シノブさんを俺以外の奴になんか絶対に渡したくないと思う…なのにお前は…」


「ストップ。降谷くん、俺なら大丈夫だ。」




元々二人がお互いをどう思っているかも、本人たちより先に気づいていた。


俺からすれば、なかなか近づかない距離がさらに離れようとしているのを見て、ハラハラしてしまったほどだ。




「まあ、もう少し君のもの解りが悪かったのなら、俺が横から攫っていただろう。」


「なっ!!」




これもまぁ本当のことだ。


彼には敵わなかったが、俺が彼女のことが好きだというのは間違いない。


これからも、俺は彼女から離れることはないし、まぁ…手も出すこともあるだろう。




「俺に盗られるなよ、降谷くん。」


「っ当たり前だ!FBI!」




余裕のある笑みを浮かべる赤井に、先ほどのしおらしさを全て吹っ飛ばした降谷。


そこに、子ども特有の軽い足音が聞こえた。




「赤井さん!安室さん!」


「コナン君!良かった、無事だったんだね!」




瓦礫を飛び越えてコナンが走ってくる。


その顔は青白く、迎えた安室の服を掴んだ。


手が少し震えている。




「コナン君、大丈夫かい?シノブさんとは一緒じゃなかったのか?」


「…シノブさんは…」




そう言ったきり口を噤んでしまうコナンに、二人は嫌な予感を覚える。




「コナンく…」


「シノブさんは…後から合流するって言ってた。必ず、合流するって…」


「それって!「分かった、ボウヤ。今は三人であの機体を落とすことを考えよう。」




赤井はコナンの頭を撫で、諭すように声をかけた。


見上げたコナンの瞳は、涙こそ流れてはいないが赤く充血している。




「赤井!!」


「降谷くん、分かるだろう。今は信じて、俺たちは奴らを討つことだけを考えるんだ。」




優先順位は決まっている。


彼女のことは心配だが、このままでは銃撃の雨に打たれるか、瓦礫に仲良く埋まって心中だ。


それを理解し、苦渋の決断をしたであろうボウヤに、ここで二の足を踏んでは示しがつかない。


降谷君も頭では理解しているのだ。




「降谷くん、自分の手を無駄に血で染めることは止めろ。大丈夫だ。」


「信じる、だろ。…すまないコナン君。」




固く握りしめすぎた拳から血が流れる。


降谷はコナンに目線を合わせ、浅く微笑んだ。




「ううん…大丈夫だよ。それで、赤井さん達に何か策はある?」


「…実は暗視スコープがおしゃかになってしまってな。奴らの機体自身には歯が立ちそうにないが、姿が見えれば弱い部分を狙えなくもない。」




赤井がスコープを覗きながら言う。


機体は先ほどよりも近づいており、辛うじて大方の形はわかるものの、正確な狙撃はできない。


大体でも当たることは当たるだろうが、奴らに致命傷を与えられず反撃を知られ、こちらが手も足も出なくなるという事態は避けたい。




「…姿が見えればいいんだな!」




赤井の言葉に、降谷がC4爆弾の起爆装置を操作する。




「見逃すなよぉぉ!!」




「いっけえええええ!」







一際眩しい光の後、大輪の花火が咲き誇った。










(墜ちろ…!)


(!何者かから攻撃を受けてる!?)

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