好み
きっかけは、何気ない一言だった。
「ねぇ、シノブお姉サマの理想の恋人ってどんな人?」
喫茶店ポアロにいた蘭と園子は目を輝かせ、
コナンは飲んでいたオレンジジュースを吹き出し、
隣に座っていた沖矢は片目を開き、
キッチンの奥では皿の割れる音がした。
ちなみにシノブは一人でカウンターに座ってカフェオレを飲んでいる。
「園子ちゃんたら、かなり藪から棒だね。」
そう言って振り向く姉の表情は、何とも言えない難しい顔をしていた。
「私も聞きたいです!どんな人がタイプなんですか?」
「蘭ちゃんまで…なんで聞きたいのかわかんないけど…」
「シノブさんの好きなタイプですか?僕も気になりますね…」
是非参考にします、とキッチンの奥からシノブの注文したショートケーキを持って現れた安室に、女子高生2人はきゃあきゃあと騒ぎ出す。
(やっぱり安室さんって、シノブさんのこと!)
(きゃー!お姉サマったら罪な女〜!)
「第一に、優しい人」
「第二に、頼りがいがある人」
うんうん、とみんなが頷きながら聞く。
「第三に、高収入で安定してること」
うん…?
「第四に、私より強くて頭もいい人」
「第五に、顔が格好いい人」
急にハードル上がってないか?とコナンは半眼で姉を見る。
「あと、料理ができる人かな!」
誰を想像しているのか、ケーキを口に運びながらニッコリ笑うシノブ。
若干引いている実弟とは反対に園子と蘭は、シノブくらいになると当然だと言う意見。
「でも安心したわー!」
「そこまで凄い人、なかなかいないもんね!」
まだまだお姉サマは私たちのものよー!
と顔を見合わせてまたきゃあきゃあと話を続ける2人。
(それが近くにいるんだな…)
ケーキのお代わりを何にするかとメニューと睨み合う姉を、心底愛しそうに見つめる男たちを見やり、またオレンジジュースを啜った。
「あ!素敵な車でドライブにも連れてってくれる人も追加で!」
((俺のことだな))