紺青の拳(予告)
近年高度に経済化された貿易・交通・金融の中心地のひとつである都市、シンガポール
海洋の埋め立てで拡大してきたこの地は、夜でも眠らず明かりが行き来している
「海賊船と共に沈んだブルーサファイア…そのまま見つからなかった方がロマンチックだったと思うんだけどねぇ」
「…へえ、確かにシノブさんは宝石の価値とか興味ないもんな」
「観るのは嫌いじゃないけどね。綺麗なものは綺麗だし。それに、沈んだままだったら、貴方がこんな目にあうこともなかったのにね?」
日本で羽ばたく白い翼を異国の港で休める身体は赤く染まっていく。
「言われずとも、やられっぱなしじゃ性に合わねーからな…ってイタタタタ!」
「我慢しなさい、強い子でしょ」
遡るは数時間前―
真っ青な空に真っ青な海
露出の多いナイスバディな美女にたくましい身体の男性
世話しなく行き交う人々に豊かな水を吐き出すマーライオン
そこへ健康的に日に焼けた少年の頭を撫でながら現れた、見慣れた人影の正体は―
「ハァイ、新ちゃんこんなところで会うなんて偶然ねー」
「げっ、いや、ね、姉さんじゃねーか」
「え!お姉さま!?」「シノブさん!?」
予想外の展開に焦る高校生探偵(偽)と、まったく同じにこやかな笑顔を見せる現地少年(仮)と女優帽をかぶった美女(変装中)
彼らの目的は格闘技観戦?ダブルデート?はたまた未来の義妹への虫よけ効果?
「見なさい貴方たち、あれが愛の力よ」
「…姉さん、いつもそうだけど啖呵切った後の事考えろよな…心臓に悪いぜ」
「馬鹿ね、園子ちゃんのピンチになれば真くんは飛んでくるのよ。真くんだけじゃないわよ、平ちゃんも新ちゃんも同類よ」
いつも踏みしめる土地は違えど、人が同じなら起きることも同じ
一見透けて見える殺人と爆破事件、姉弟(偽)とアーサー少年が立ち向かう
「格闘技はあんまり興味ないんだけど、真くんの応援はしてるから、結果は今夜にでも教えてちょうだいね」
「へーへー…って姉さん、いったい何しにシンガポールに来たんだよ」
「何しにって…仕事兼バカンスに決まってるでしょ」
「バッ…まさか降谷さんも一緒じゃねえだろうな!」
「そこは弁えてるわよ。さすがに降谷さんにも、新ちゃんがコナン君だとは言えないものね、うん、そこはね」
「…なんか怪しい」
カップルの愛の騒動に纏わりつく陰謀
陰湿な事件の発生に周囲の人間にも暗い影が落ちる頃、大切な人たちの表情を晴らそうと動き出す
「…ブルーサファイアが最終目的ってわけじゃなさそうね、あの下マツゲ」
「いつまでもやられっぱなしってのも癪だし、そろそろ反撃してもいい頃かもな」
「じゃあ彼を呼びましょうか?まあ今日も会う約束してるんだけどね」
「…シノブさん」
「姉さんのタイプじゃねえかと思ってたよ」
「…アンタたち人聞きが悪いわね、あっちから誘ってくるのよ」
探偵と怪盗に解き明かされる事件と真相
火に包まれる都市に、徐々に逃げ場がなくなり、それぞれに繰り広げられる展開は誰が予想したものか
「あっちもこっちもいいわねえ、守ってくれる彼がいて…」
「おっと、助けが必要かな?お姫様」
「そうね、助けに行ってあげてって言いたいところだけど、私の切り札は貴方だから傍にいてもらわないと困るのよね。だから、さっさと片づけましょうか」
「了解」
暗い夜空に次々と破壊された街並みが燃え上がる
自由になった鳥はその隙を飛び回り、最後に勝利の笑みを浮かべた
「ちょっと…やっぱり高いところにいるもんじゃないわね」
「!貴女は…どうしてここに!」
「どうして、じゃないわよ。貴方の見た目と外面は気に入ってたんだけど、あんまりおイタが過ぎると駄目よ」
「一体…一体何者なんだ…!」
「あら、自己紹介したでしょう。そしてそれを利用しようともしたわね?私はね…日本…と彼女を愛する高校生探偵の姉よ」
紺青の拳―
「それで?シノブさん、シンガポールの警察の人とは実際どうだったの?」
「…おっと、コナン君?ここでそんなこと聞く?」
「うん、新一兄ちゃんから聞いたよ!安室さんに雰囲気が似てたって!だから今思い出したんだ!」
「ふうううん、へー、そんなこと言うんだ。あれはね、雰囲気が似てるというか、猫かぶり感が似てた…」
「…シノブさん?ちょっと話があるんですけど?」
〇年×月△日スタート!