if FBIに姉がいたら@


そし壊後、姉がFBIだったらif

日常編
(一応付き合っているが、職務上なかなか会えていないみたいです)














十数個並んだデスクとパソコン。

据わり心地の良さそうな広いソファにお洒落なテーブル。

給湯エリアにはお湯が沸き、コーヒーメーカーがセットされている。

空調はクーラーが効いているのは他フロアと同じだが、ここにいる人間はみなノースリーブやTシャツだ。

敏感な鼻をスンと動かすと、すぐ近くで大きな声で笑いながら立ってハンバーガーを頬張っている二人組。

眉間に皺が寄っていることは、自分でも大いに自覚している。



「降谷!どうしたの難しい顔して入口に突っ立って!」

「…スターリング捜査官…書類をお届けに参りました」

「アラ!ありがとう!わざわざ悪いわね!」

「いえ、一段落したところでしたから…それで、あの、」

「ああ、シノブなら今外に出てるのよ」



いろんな意味で以前より馴染みのあるジョディ・スターリングがちょうど声を掛けてくれたところで、手に持っていた書類を彼女へ手渡す。

最初はそれはもう公安とFBIは犬猿の仲であったが、共通の敵の存在、そして仲介するかのように現れた一人の少年によって手を組み、かの組織を壊滅に追いやった。

その経過の中でまあとりあえずは協力してやっていきましょうと両組織のトップが話し合い現在に至るのだが、これまでも(もちろん今も)必要以上な接触はせず、飲み会の一回も開催されない殺伐とした関係が続いている。

一部を除いて。



「そうですか…」

「用があるなら、メッセージアプリで連絡したらいいじゃない」

「いえ、仕事の話ではないので」

「What?プライベートの連絡じゃ駄目なの?さすがにあの子もずーっと仕事してるわけでもないわよ」



理解できない、というように首を傾げるジョディにまた不機嫌を隠すこともなく降谷が続ける。



「これだからFBIは…。勤務時間中なのはもちろんですが、声を掛けるタイミングも考慮しなくては、シノブさんのお手を煩わせることになるでしょう」



「…まあその気遣いはとても素晴らしいことだと思うけど、ミスター降谷、シノブは今ダニーズカフェにコーヒーを買いに行っているだけよ」



すぐに戻ると思うからもし用があるならそこに座って待っててちょうだい、と指されたソファへ大人しく座る。

…座ったのはいいが、書類はジョディに渡してしまったし、仕事の要件がないのに事務所で待ち伏せしたりして、帰ってきたら彼女の仕事の時間を奪ってしまうことになるし、本当にいいのだろうか。

勤務時間中に何しに来たんだ、真面目に仕事しろ、愛が重いなどど思われないだろうか。

クソ、書類をFBIに届けにいくという部下の用事を請け負って、勤務時間中にあわよくばシノブさんの顔を見る事が出来、さらに運が良ければ挨拶もできるかもしれないという下心が完全に裏目に出ているじゃないか…!



『…おい、フルヤが静かだぞ、一体どうなってんだ』

『いつもみたいに怒鳴ってないし、なんだか小さく見えるぞ、おいケビン!おまえも見てみろよ!』

『oh…なんだか知らないが元気だせよ!そうだ、シュウがいれば元気になるんじゃないか?』

『シュウならキャメルと出てるぞ。もうそろそろ帰ってくる頃だと思うが…』



お洒落ソファで膝に肘をつき俯く降谷の表情を見ればざわざわと物珍しそうに群がる面々も血相を変えて大人しく自席に戻るだろうが、生憎表情は彼らには見えることはない。

ただ、幸いなことに、降谷はこの檻の中の動物状態の自分に気づく余裕はないので被害は今のところ出る予定がない。



「ただいまー!いつものラテ、ジョディの分も買ってきたわよ」

「あら、ありがと!これ、期間限定だから今のうちにたくさん飲んでおかなきゃ!って、そうそう、アナタに来客よ」

「来客?」



ジョディがシノブに促した瞬間、折りたたまれていた降谷の腰がものすごい勢いで跳ねあがった。

背筋が異様にピンと張っている。



「ど、どうも!シノブさん、お元気ですか?」

「えっ、降谷さん?めずらしい!」



コーヒーを片手にきょとんとこちらを見るシノブが可愛い。

話しかけられたのも何日ぶりだろうか。

降谷は先ほどの葛藤も忘れ、一人感動していた。



「どうした…ああ、降谷くんが来ていたのか。珍しいな。」

「降谷さんが来てるならもっと早く帰ってきたらよかった…」



赤井さんがついでに色々と頼むから!と少し後ろに立つガタイのいい男の腹筋を手の甲で軽く叩く。

いつも他の職員には無愛想(凶悪とも言う)な面しか見せないその男は、ふっと薄く微笑んで目の前のシノブの頭に手を乗せた。

ブチッ



『ぶち?』

『why?なんの音だ?』



先ほどまで降谷を野次馬していた職員が頭に?マークを浮かべたが、そのときには既にジョディとキャメルは自席に避難した後だった。



「…俺だってなぁ」

「降谷くん?」



ツカツカと綺麗に磨かれた光沢のある靴が赤井の少し草臥れたブーツ近づく。

そして赤井が二言目をつむぐ前にシャツの胸倉をガッと掴んだ。



「ちょ、ちょっと降谷さん…」

「俺だって、シノブさんとちょっとコーヒー買いに行ったりしたいし、事務所に帰るのが重なって一緒にエレベーター乗りたいし、職場でもそんな距離で話したいし、なにより、仕事来るだけで顔が見れるなんて本ッッッ当に羨ましい」

「ああ、そうだな、俺も今の職場は最高だと思っている」

「あ、赤井さん?」



胸倉を掴み上げたままフルフルと震える降谷に、赤井が至極真面目な表情で同意する。

この頃には他のFBIの面々も続々と距離を取るようになっていた。



「ところで降谷くん、キミは今日で何徹かな?」

「…四徹目ですがなにか?言っておくが、俺はまだまだ働けるからな、FBI!!」

「いえ、アウトです降谷さん」



据わった目で射殺すように赤井を睨みつけていた降谷の手にそっと別の両手が重ねられた。



「風見さんに迎えに来てもらうのと、今すぐ私と帰るのとどちらがいいですか?」

「いえ、しかし今日はまだまとめ切れていない報告書がありますので」

「…ふうん、降谷さんは私と風見さんなら風見さんにお世話されたいのね」

「おおおお世話?!い、いや、決してそんなことは…!」



シノブがちらりと視線を寄越すと、ジョディがウインク付きで親指を立ててくれる。

すっかり赤井のことが眼中から消えたことを確認し、そのまま降谷の腕を取り、腕に下げていたコーヒーのショップバックを側にいたケビン(金髪ショート、タンクトップ、ゴリマッチョ)に押し付けた。



「FBIと公安の仲を悪くするわけにはいかないので、降谷殿を介抱してきまーす」



ピューピューと四方から聞こえる冷やかしの口笛

シノブはそれに返事をするように、その場にいた捜査官全員に向かって片目を瞑ってみせた。



『…俺、彼女のこと大ファンだったんだけど、フルヤになら許せるんだよな』

『公安のエースとうちのプリンセスじゃあ、お似合いすぎて誰も何も言えねぇよ…』



そう呟いた捜査官の声は、閉まるドアの音に遮られ、二人に聞こえることはなかった。











Next?
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「降谷さん!次の捜査はFBIと合同で行うらしいです!」


「なに?次の捜査は俺の潜入捜査だったはずだが」


「そうなんですが…ウエイター役だけでは動きにくいだろうと申し出てきたみたいで…」


「まさか、この、潜入捜査官、女性二名というのは…」


「…ドレスは一応露出少な目にします!…とのことです」


「くっ…赤井いいいいいいい」


「赤井捜査官は自分の好きなものは自慢したいタイプでもあるので…」


「俺は!自分の好きなものは誰にも見せたくないタイプだ!!」





次回、ナイスコンビネーション!?合同潜入捜査を成功させろ!

お楽しみに〜!

(嘘です)
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