謎解き




「さて、服部くん。僕たちも答え合わせと行こうか…」

「せやな。…ていうても、兄ちゃんも大体察しはついとるんちゃうんか?」



後部座席から身を乗り出し、降谷に話しかける服部。

その表情は明るい。



「いや、本当に大体だよ。例の件での仲間割れの真相に行き着くまでは、しっかりした裏付けが欲しい」



促すようにチラ、と片目で服部を見やる。

服部は大袈裟に肩を竦めてみせた。



「仲間割れて…やっぱり分かっとるんやないかい。…まあええわ。あれからお二人さんと別れてから俺の携帯に情報が入ったんや」

「服部くんというと、大阪府警関係からだね?」

「はは、あんま言わんといてや。おとんにもシバかれるさかい…」



苦笑して頬をかく仕草をする彼に、大人顔負けの頭脳を持ってはいるが、やはり高校生なのだと少し肩の力を抜く。



「ゴホン、そしたらおさらいも含むで。現金輸送車襲撃事件やけど、ファーイーストオフィスの西尾のデスクから伊東が書いた事件の計画書が発見されたことにより、2人の名前が容疑者として挙がったんや」

「しかし西尾はすでに何者かに射殺された後だった」

「そうや。その後すぐ後に事故った伊東の車内から犯行に使われたライフルが発見された…」

「それにより一時は伊東の犯行と思われていたが、その後の調べによりスコープから2人と親密な仲にあった同じ社内の秘書室長である清水が使用していたレア物のマスカラが検出された」

「お…おお。やっぱりアンタも警察にコネがあるんやな」



驚いたように少し身を引く服部に、君ほどじゃないよ、と返しておく。



「その後、彼女は海に身を投げ自殺。伊東は病院から抜け出し行方不明…なんだよね?」

「ああ、そうだね…って、コナンくん!?」



今まで冷静に話を進めていた降谷だったが、聞こえてきた幼い声にはさすがに声を荒げる。

対してコナンの隣に座る服部は、いつものことだとコナンの言葉に頷いている。



「どうして着いて来たんだい!?てっきり博士のビートルに乗ってるものだと…」

「えへへ…気になって来ちゃったんだ」



子どもらしく無邪気に笑顔で返される。

向かっている場所ではこれから捕物が始まるのだ。

そんな場所に小学生を連れて行っていいわけがない。

それに…



「コナンくん、シノブさんに怒られるよ」

「うっ…」



マズイときにその名前を出されると、途端に冷や汗を浮かべてしまうのは、なにもコナンだけではない。

言っておきながらも降谷自身、シノブは怒らせてはいけないと思っている者の一人である。



「ま、まあまあ。姉ちゃんには俺も一緒に謝るさかい」



服部がコナンの頭を撫で回しながらフォローするが、そううまく行くだろうか。

溜息を吐きながらも、レッドキャッスルの駐車場へと乗り入れた。



「そ、そや!追加で重要な情報や!」



空気を変えるようにポンと手を打った服部が続ける。



「白馬と3人で犯行現場に行って来たんや。アンタも、犯人が装弾数8発全てを犯人が撃ち切り、その中の一発が西尾の後頭部に穴開けたっちゅうことは聞いとると思うんやけど」



シートベルトを外しながら、降谷は服部の言葉に耳を傾ける。

そこまでの情報は風見に確認済みだ。

しかし現場を見てきたという高校生探偵の言葉は、信憑性がある。



「西尾が掛けとった椅子の背と真下にはでっかい血のシミがあった。けど倒れた場所の頭があっった所にはそれほど広がっては無かったんや」

「!それは…」

「ちなみに椅子のキャスターが撃ち抜かれてて一つ取れちゃってたんだよね」



コナンが続けて口を開くと、降谷はドアを開け、外に出た。

追うように2人も続けて腰を上げる。



「…早くしないと毛利先生が危ない」

「よっしゃ!いよいよ最後の答え合わせっちゅうわけや!」



コナンを背負った服部と降谷は、全速力で依頼人の元へ駆けた。



「ってなんでコナンくんを背負ってるんだ!」

「な、なんでて!ガキ一人で暗い中、駐車場に置いて行かれへんやろ!」

「馬鹿か!これから行くところの方が危ないに決まってるだろ!」

「せやかて!!もう着いてしもたわ!!」



降谷が勢いよく開けた扉の向こうに、小五郎の姿が見えた。

モニターには依頼人の姿が映し出されている。



「ちょっと待ってください!毛利先生!」

「あ?安室くんに…坊主?お前らも解けたのか?」



思いきり開けたドアの音と登場した人物に驚く小五郎に、降谷が詰め寄る。

コナンはその隙に止めようとした執事に向かって麻酔針を放つ。



「毛利先生…すみません!」

「なっ…」



どすっと鈍い音を立て首裏に入れられた手刀に、成す術もなく倒れ込む小五郎。

その体を受け止め、モニターを見やったが、すでに画面は何も映してはいなかった。



「くそ!マズイやんけ!」

「どっかにモニターを繋げる方法はないか!?」



服部とコナンに焦りの表情が浮かぶ。

依頼人がゲームオーバーと見なせば、自分たちはもちろん、シノブや蘭たちの命までも危ない。



「落ち着くんだ!この執事が持っていたリモコンで…」



降谷の手の中にあるリモコンが反応し、壁から一筋の通路が現れる。



「凄い仕掛けだな…とりあえず、ようやく最終決戦ってわけだ」



服部はコナンを抱えなおし、先を行く降谷の後を追った。

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