日没



「コナンくんたちはいまどこに?」

「大学を出たところらしいわ。やっぱり変な奴らに襲われたって一応無事、って歯切れの悪い返事だったけど…」

「そうですか…一旦答え合わせが必要ですかね」



うーん、唸り口元に手を当てる。

先ほどの通話では、CRYの元部長が伊東 末彦だということがわかった。

そしてそこには次のヒントはもうない。

出尽くしたヒントや情報を元に、最終の推理へと繋げるべきだ。



「夕焼けがすっかり沈みましたね…」

「このメンバーじゃ迷宮入りにはならないでしょうけど、問題は時間ってわけね」



シノブは閉じたばかりのスマートフォンにメッセージを入力した。

返事は無かったが、3分もするとエンジン音と共に見慣れたビートルが助手席側に着けられる。



「博士?どうしてここに…」

「話せば長なるんやけど…あの変なバイク連中から逃げる途中に坊主が足負傷してしもてな。この博士呼んで応急処置してもろたんや」



服部に指差されるまま後部座席を覗きこむと、左足を包帯で頑丈に巻かれたコナンの姿。

添え木がしてあるところをみると、折れているのかもしれない。



「あとな、毛利のおっさんがこの依頼の謎が解けたから依頼人のとこ行く言うて行ってしもたんや!で、くど…コナンくんとレッドキャッスルに向かおかー言うてたとこやったんや!」

「毛利先生が?」



服部の言葉に、シノブと降谷は顔色を変える。

もし小五郎の推理が間違っていたとしたら、小五郎の身の保障はできない。



「私達も早くレッドキャッスルに行かないと!」

「そういえば、もう一人の高校生探偵はどうしたんだい?」

「ああ、白馬は坊主助けた後、やることがある言うてどっか行ってしもたんや」



不機嫌な表情を隠そうともせず、服部が降谷の質問に答える。

その返事に怪訝そうな表情を浮かべた恋人の隣で、シノブは違う意味で眉間に皺を寄せていた。



「無茶なことしないといいけど」

「ほんまやで!一緒におったほうが、あんな嫌味な奴でも役に立つっちゅうねん!」



本格的に話がずれていきそうになったところで、降谷が片手を挙げた。



「とりあえず、レッドキャッスルには向かった方がいいだろう」

「そうね…道中ででも推理の答え合わせはできるし…」

「ただし、レッドキャッスルに向かうのは僕と服部くんだけです」

「…はあ?」



思わず漏れた声も気にせず、降谷を半眼で睨みつける。

服部は降谷の意図をくみ取ってはいないようだが、コナンはうん、と強く頷いた。



「だって今回依頼を受けたのは安室さんと平次兄ちゃんでしょ?シノブさんは依頼人からすれば部外者じゃない」

「そりゃあそうだけど…」



そんなの今更じゃない、とコナンにまで噛みつく。

服部と博士はなるほど、という表情で事の成り行きを見守ることにしたようだ。



「それにシノブさんはいつも無茶するんだもん、安室さんも心配なんだよ」



ね?と言い聞かせるように告げられると、口を噤むしかない。

納得は行かないが、正論ではあると感じているのだ。



「シノブさんとはずっと一緒に推理してましたから、服部くんにはきちんと伝えて、必ず真相を導き出すと誓いましょう」

「…せやな。なんやあのバイクの変な男らといい、危ないことが起これへんとも限らんしな」



そうと決まったら俺が兄ちゃんの車に乗り込むわ、と服部が早速シノブの座る助手席のドアを開けた。



「…わかったわよ。けどね、私だって2人のことが心配なんだから、大怪我して帰ってくるなんてこと止めてよね!」

「僕も同じ気持ちです。貴女を危険な目に合わせたくない…信じてください」



シノブはアイスブルーを見つめ、ひとつ頷き車外に出る。

博士が開けてくれたビートルの助手席に大人しく収まった。



「あ、悪いけど服部くんは後部座席に座ってね。助手席はシノブさん専用だから」

「はあぁ?!なんや腹立つ兄ちゃんやな!!」



にっこり笑った降谷にぶつくさ文句を言いながら後部座席に乗り込む。

シノブはそれを見てようやく少し笑った。

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