TAKA3-8
「あ、ふる…安室さん!」
「シノブさん、すみませんお待たせして…。」
「ううん、おじ様とコナンくんも一緒だったのね」
通話の後すぐに引き返して来たのか、シノブはレッドキャッスルの出入り口で待っていた。
シノブは3人に手を振り、とりあえず側にあったベンチに腰を下ろす。
「さて、3人ともそんなに血相を変えて走ってくるくらいだもの。何があったのか教えてくれるんでしょ?」
「…そうですね、とりあえず僕はシノブさんに謝らなくてはいけません。」
そう言って降谷はシノブの手を取る。
「…薄々想像つくけど、やっかいな依頼内容で、私を巻き込むことになりそうだから謝ってるの?」
「いえ、やっかいどころか…」
後ろにいるコナンと小五郎も一様に暗い顔をしている。
なんて辛気臭い連中だとシノブは本気で思った。
「…あのね、いつも私、なんて言ってる?謝ってくれって?」
眉を吊り上げてジトリと見つめる。
降谷さんは怯み、一歩後ずさった。
…凶悪なテロリストにも怯まない降谷さんが自分に対してそんな反応を返すことに内心少し笑みを浮かべているのは秘密だ。
「…シノブさん、今から説明するので、一緒に来てくれますか?」
「うん、わかった」
おずおずと協力を申し出る降谷さんに今度は隠すことなく笑みを返した。
事情を説明してもらうのには5分もかからなかった。
そこから一旦はとりあえず一緒に行動しようという話になりかけたのだが、シノブの、時間も勿体ないしとりあえずミラクルランドを出て移動しながら推理しようという案がその後採用された。
シノブは降谷と一緒にRX-7で、コナンは小五郎と一緒にレンタカーで来ていると言う事もあり、とりあえずそのまま二手に別れた。
「…さて、行きましょうか」
「あれ?降谷さん、もしかしてもう分かってるの?」
慣れた手つきで助手席のシートベルトを装着し、メモを取り出したシノブは目を丸くした。
「TAKA3-8でしょう?東京と隣接する県辺りの地名・地理や歴史等々は大体頭に入っていますので。」
「はぁ…さすがゼロ」
本気で関心していると、少し照れたように、当然です、と返される。
なんだこの人、彼氏なのに可愛い。
「じゃあ走りながら説明してもらえますか?」
「そうですね…。まず初めにTAKAよりも3-8という数字が気になったんですが、その書き方、どこかで見覚えがあると思いませんか?」
「書き方?」
そう言われて思い出すのは、中学のクラス番号や計算式…。
クラス番号だとしたらTAKAは学校名。
計算式と言えばTAKAはまだまったく想像はつかないが…。
「…これだけじゃわかんないわね」
「そうですね…。確かに、俺の推理も一理ある、というレベルです。とりあえず、旧高島町3丁目8番5番地に向かっています。」
「!住所だったの?」
なるほど。計算式というのもあながち間違ってなかったらしい。
3-8=-5から3-8-5。
3つの連番になれば、見覚えのある数字といえば確かに番地。
となるとTAKAは地名となるわけか。
腑に落ちたと同時に、少し悔しい気持ちにもなってしまう。
「テロ組織のアジトや取引現場へ急行したり、会議で地図も見慣れているので、特定の住所や場所は俺たちの分野ですからね」
「まあね…ゼロって全国のテーマパークのエリアとかアトラクションとかも覚えてるって話だもんね」
「そうですね。その能力が仕事だけでなくシノブさんとのデートにも活かせるといいんですが」
にこりと微笑む横顔を見ないふりをしてメモを取った。
その途中でふと我に返って降谷の膝を軽く叩く。
「って、すぐ分かったんなら、4人で向かった方がよかったんじゃないの?」
「うーん、でもシノブさんと俺がいれば何でも解けそうな気がしますし。そもそも今日だって2人でいれる予定だったわけですし…」
珍しくもごもごとキレの悪い返事をする降谷さん。
すぐに察した私は、あまりいじめるのも可哀想だと思い、そっか、と頷いた。
そうこうしているうちに目的地に着いたのか、廃屋になっているであろうビルの敷地内に車が停まる。
「ここって…ホテル、だったのかな?」
「そうですね。かなり前になりますが、以前はそれなりに客入りもあったように記憶しています。」
停まっている車は自分達の分だけ。
コナンと小五郎も恐らく謎を解いてくるだろうが、シノブたちが一足早かったようだ。
「ライトあるよ、降谷さん」
「ありがとうございます。足元気を付けてくださいね。」
薄暗い建物の中、降谷の先導の下、第一のヒントの調査が始まった。